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第67話

「佐知子さん、ハジメちゃんって撫でてもいいですか?」 「飛びついちゃうかもだけど、孫たちで子どもは慣れてるから大丈夫よ。ハジメちゃん、お座りよ、お座り」  ハジメちゃんは佐知子さんの言葉でちょこんとお尻をつけた、ってことは問題はルカってことだ。  僕はしっかり抱きしめて、いざとなったら庇えるようにそっとルカの手を包み込んだ。  ふんふんと匂いを嗅ぐために近寄ってきてくれたハジメちゃんは、僕の手の中のルカの匂いを嗅ぐために鼻先を突っ込んで…… 「きゃあ!」  濡れた冷たい鼻がくすぐったいのか、ルカは飛び上がって僕にしがみつく。  怖がっている感じじゃなくて、驚いたのかな? 「可愛いね」 「かーぃ」 「そう。わんわん、可愛い」 「ハジメちゃんは可愛いでしょー?」  佐知子さんはちょっと得意そうに笑ってルカの手をチョンチョンと突く。 「わん……かーぃ…………」  そう言いつつ、ルカはまたチラリとハジメちゃんを見る。  警戒はしている、でもさっきの感触が忘れられなかったのか手を握ったり開いたりしているのが可愛い。 「ちょっとずつ仲良く慣れたらいいわね」  嬉しそうに佐知子さんが笑ってくれるから、僕も嬉しくて……「そうですね」って言葉を返した。 「そう言えば、三千代さんがバギーを用意してくれたそうよ」 「え⁉︎」  三千代さんはもう一人のおばさまだ。  ルカを抱っこしたまま買い物は大変じゃないかって、以前に聞いてくれたことがあった。   「あそこのお孫さんはもう大きいから、いらなくなったのを引き取ってきたんですって。ルカくんが使うのにちょうどいいからって」  「ねー」って言いながらルカと握手する姿に、僕はほろりとしてしまいそうだ。  アパートを追い出された事件や就職先が唐突にクビにしてきたことを思うと、なんて人間らしく扱ってくれるんだって思う。  ……ただこれも、僕の性別を隠しているからかなって、卑屈に思ってしまうところもあったりして。 「できるだけ私たちも気を配るから、しっかり見ててあげてね」 「もちろんです!」 「また怖い目にあったら可哀想だものね」  そうだ と腕に力を込める。  ルカが誘拐されかけたって以前に二人が話してくれたことを思い出す。今から考えれば、最初に会った時の二人の態度は僕が誘拐犯だったらって不安からきたものだったのかも知れない。  小さなことだけれど、気にかけてくれる人がいるってことは嬉しいことだった。 「犯人は捕まったんですか?」 「……」  佐知子さんは曖昧な表情をしてから、返事に困った様子を見せた。   

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