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第72話

 いつもなら夕飯の準備を終えて、ルカをお風呂に入れて……って時間帯だ。 「ルカさまは……」 「風呂に入ってもう食卓に着いている」  そう言うとふぃと背中を向けて出ていってしまうから、僕はルカが一人でお風呂に入ったのか? とか、今一人で椅子に座っているのか? 落ちたら危ない! とか色々なことを瞬時に考えた。  大慌てで階段を駆け降りると、リビングのローテーブルの前でじっと座っているルカがいる。 「あ、れ?」 「この方が安全だろう? 君もゆっくり食べられるはずだ」  ルカは僕を見るとパッとこちらに駆け寄ろうとしたが、トーマに「座りなさい」と注意を受けて渋々とした様子を隠しもしないで元々座っていたところに戻った。 「夕食は用意した。……とはいえ、君が作り置きしておいたものばかりだが」  トーマが示す先に並んでいるのは確かに僕が夜中に作ったものばかりだったけれど、きちんと皿に取り分けられているし、作った記憶のない味噌汁も並んでいる。 「味噌汁くらいは な。君のような味にはならなかったのが残念だ」 「あ ありがとうございます! 嬉しいです!」 「うーし?」 「はい、嬉しいですよ」  柔らかに返すと、ルカはキラキラとした笑顔で僕を見て、それからトーマを見て嬉しそうに声をあげて笑う。  三人で夕飯を食べられるのが楽しいみたいで、ちょっと興奮気味だった。  キッチンのテーブルよりもリビングのローテーブルは小さいから、その分自然とお互いの距離が近くなる。  それがなんだか……嬉しかった。 「作り置きをしてくれていて助かったよ」 「明日の夜にもう一度、明後日の分を作っておきますね」 「ああ、しっかり診てもらってきなさい」  ここから、かかりつけのバース病院まで行くと電車賃はどれくらいかな? ってちょっと頭の中で考える。  僕のお財布の中は、もう小銭が少しと金色のカエルが入っているだけだった。 「まずい……」  片道の電車賃でも無理かもしれない。  IC系カードもないし、ここはやっぱりクレジットカード? それとも……ちら とトーマに視線をやった。  リンにはキツくトーマを煩わせるなって言われているけれど、今日は二度も介抱させているし、ルカの面倒も見させてしまって……煩いっていうなら、もうこれ以上ないってくらい面倒をかけている。  リンとは歩み寄ろうとしても会話にすらならなくて、休みの話もできなかったくらいだ。  これ以上、リンに頼んでもずっと無視される可能性があるんじゃないかなって思ったら、トーマに直接言うべきだって考えに辿り着く。 「やはり美味くないだろう? 味噌汁は残しなさい」  

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