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第83話
「…………っ、君は……悪い家政夫だな」
「あはは! はい!」
堂々と返事をしていいものではなかったのかもしれないけれど、二人の間になんとなく漂う砕けた雰囲気に堅苦しい空気を入れたくなくて、僕は明るく返事をした。
その異変に気づいたのはルカだった。
僕がいつも買い物に持っていくトートバックではなく、滅多に使わないショルダーバッグを持ち出してお出かけの準備をしていたからだと思う。
「? おちゃんぽ? るか、も、いく!」
そう声を上げられて、悲鳴の代わりに可愛いっ! って言葉を漏らしてしまった。
「ルカさま、本日、ままのは遠くにお薬を探しに出なければなりません」
「おしゅーり?」
「はい! とても大切なお仕事なのです! 成功した暁にはルカさまに『のーん』の絵本を買って参ります!」
ルカは「のーん?」って言いながら絵本を片付けてあるオモチャ箱の方へ飛んでいき、リンゴを探しにいく『のーん』の本を持ち出してくる。
「のーん?」
「はい! 新しい『のーん』のご本を連れて参りますね」
「のーん!」
ルカは僕の言葉を理解したらしく、絵本を頭上に掲げてバタバタと走り回った。
「ルカ、家の中は走るんじゃない」
二階から降りてきたトーマがそれを見て注意をする。通勤ではない日の朝のトーマは普段よりも少し隙がある雰囲気だ。
いつもはぴっちりとボタンが止められ、ネクタイの巻かれた首元が少し緩んで喉仏が見えているし、少しゆったりとしたシャツを着ているからか前腕が剥き出しになって男らしい筋が浮かんでいた。
細めだけれど綺麗な筋肉をしているトーマの手は、つい見惚れてしまう価値がある。
「おはようございます! 本日はよろしくお願いいたします」
「ああ」
「朝食はテーブルにご用意しております。昼食はお弁当箱に詰めておきましたので、冷蔵庫から取り出してお食べください。お弁当の中身は生姜焼きをメインに、クラムチャウダーのグラタン、レーズン入りポテトサラダ、甘い卵焼き、鶏ハムのチーズサンドになります」
昨夜の料理のリメイクだけど……大丈夫かな?
「午前のおやつにはベリーとヨーグルトのスクエアケーキ、午後はサラミチョコをご用意しています」
「サラミチョコ……?」
「はい! チョコに色々な素材を入れてサラミのように細長くしたものです。生チョコで作ってありますので、直前まで冷蔵庫で冷やしていただけるとさらに美味しく食べていただけると思います」
僕はチョコにアールグレイの風味をつけるのが好きなんだけど、好き嫌いがあるから今回はフレーバーをつけないまま生チョコを作って、マシュマロ、ココアクッキー、各種ナッツ、ドライフルーツ(できれば洋酒に漬けて柔らかくしたもの)を刻んで入れて、オーブンシートに細長く並べてくるくると飴を包むように包んでおしまい。
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