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第84話
あとは冷えるのを待って、粉糖をまぶせば出来上がり!
中身はそれっぽいのだったらなんでもいいし、マシュマロとクッキーだけでもそれっぽくできるから、見栄えの割にすごく簡単にできちゃうお菓子だ。
それに何より美味しい!
これは弟たちだけでなくて両親にも好評だった。
「夕飯時までには帰る予定ではございますが、間に合わなかった場合に備えて、ジャガイモとツナのガレット、チーズ入りのハンバーグ、鶏ハムを使ったコブサラダ、ミネストローネを用意しております」
一気に話すと、トーマは少し眠気をまとわせていた目をぱちくりとさせながら驚いている。
「あ! 夜のデザートは、ワタクシがケーキ屋で買って参りますね」
「あ……ああ、豪華だな」
「トーマさまにご迷惑をかけるので、腕によりをかけました!」
ぎゅっと力瘤を作って見せると、小さな苦笑がトーマの口元を彩った。
「あまり無理をしないように。ルカの面倒も見ながらだと大変だろう」
「ルカさまが良い子なので平気ですよ、お手伝いもしてくださいますし」
って、これは家政夫としては失格だ! 慌てて取り繕おうとした僕にトーマはくすくすと笑い出す。
柔らかに目尻に皺を寄せて笑う姿は最初の頃の冷たい雰囲気は微塵もない。
「ルカには相応のことができるように指導してやってくれ」
「は……はい」
「…………君がきてくれて、よかった」
硬いガラスを隔てていない瞳は夏の日のシュワシュワとしたソーダ色だ。
揺れる氷のゆらめきと一緒に、ずっと見つめ続けたくなるような不思議な魅力があって……
「――――!」
ローテーブルに置かれた携帯電話が鳴り出し、トーマははっと夢から覚めたように表情を変えてそれに手を伸ばす。
表示を見て一瞬顔をしかめると、通話を始めながら二階へと上がっていってしまった。
仕事だろうな……と思うのと同時に、さっきまで自分を見ていた柔らかな視線が恋しくも思えて、つい背中を追うように階段を見つめてしまう。
「ままの?」
「あ……はい、ルカさま。お父さまのお電話が終わりましたらご飯を食べましょうね」
「あい」
良い子のお返事を返してくれたルカは目の前のクマパンケーキをじっと見つめていた。
ルカはこの歳の子どもにしては我慢ができる方だと思う。
それは今までの生活のせいか性格のせいだからか、それとも理解力があるからか……
「んん……」
そのルカがじっと座っていることに耐えきれずにぐずるように僕を見る。
目の前に並べられた朝食を恨めしげに見てから、拗ねるように僕の腕の中へと飛び込んでバタバタと足をばたつかせた。
子どもにしたら長い時間、大人でも何かあったのかな? って思ってしまうほどの時が経ってやっと、トーマが足早に降りてくる。
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