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第100話
「 って、ことは……」
深く眠りこんでいるらしいトーマは起きる気配がない。
その横顔を見ると端正な顔立ちはまるで作り物のようで、一昨日昨日今日と変わりない……だから、夢だ。
理解した!
盛大な夢を見たんだ!
どうしてここで寝ているのかは……ほら、寝相が悪くて布団ごとここまで転がってきたんだ!
「よし、解決した。じゃあいつも通り、朝食作る前に軽く走って…… っ!!!!!」
そろりと布団から這って出ようとした瞬間、足首を掴まれて悲鳴をあげそうになったのをなんとか飲み込む。
トーマの長いまつ毛に覆われた目はまだ開いてはおらず、表情自体はまだ眠りたがっている。そんな状態なのに手はしっかりと僕の足を掴んで離さない。
「ト、トーマさま、お はよう、ございます」
念の為に小さな声で言うと、トーマはぐずる子どものように布団に潜り込みながらもごもごと何事かを呟く。
いつも朝は着替えてから起きてきていたからこんな様子は初めてで、僕はそろりと布団の中を覗き込む。
「 だ」
「だ?」
「君は冷酷だ」
布団にくるまったままで、トーマの言葉は駄々をこねる子どものよう……って言うよりも、子どもそのものだ。
「どうして俺を置いていけるんだ。せっかく二人で寝ているのに先に出ていくなんて冷たい。俺は都筑くんともっと一緒にいたい。起きずにもう一度腕の中に戻ってきてくれ」
ぶつ ぶつ と拗ねる姿は上の弟の尾張と同じで、めんどくさ! って思うこともあった拗ね方なのに、どうしてだかこの瞬間は可愛く感じてしまう。
いつもならこの時間は朝の身支度をして、倒れない程度の運動をして、それから朝食の支度をして……って忙しいんだけど、心の天秤がガコンって傾いてしまったから、大人しく布団へと戻った。
でも腕の中は気恥ずかしいから端っこに寝転ぶと、トーマが転がってきてぎゅっと抱きしめてくる。
腕っ……腕がしっかり体に回されて、体が密着するんだけど僕はそれが受け入れられなかった。
ぐるぐるっと昨日の夜の自分の恥ずかしい姿を思い出して全力で突っぱねた。
「僕っ! 僕やっぱり起きます!」
「えっ⁉︎ ちょ、力強っ!」
腕力では負けないです! って言い返しそうになったのを飲み込みながら歩き出そうとして……腰というか、下半身に力が入らなくてぺたんと倒れ込んだ。
ぶるぶる と震える足は、アイススケートを初めてした次の日に似ている。
普段使ってない筋肉を使ったんだってわかるんだけど……あらぬところもじわじわと痛みを訴えていて、戸惑うしかない。
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