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第105話

「夕飯を作ったのか?」  ただいま の第一声の前にそれだった。  玄関まで漂ってくるカレーの香りは誤魔化しきれないから、素直に認めてぺこりと頭を下げる。 「はい。トーマさまの分だけでも、と」 「……その私の分が一番手を抜いていい部分だろう?」  そう言い、溜め息を吐きながらメガネを外すと昨夜、僕を見つめた瞳が現れて……覗き込まれてしまうと、教え込まれた快感が体の奥からじわじわと広がって、ドキドキと心臓を高鳴らせた。  いつもの「私」呼びもよかったけれど、行為の時の「俺」呼びもよかったな……なんて、つい思ってしまう。 「カレーは二日目が美味しいんですよ?」  ね? と誤魔化しながら荷物を受け取っていると、トーマがサッと腰に腕を回してくる。 「二日目が美味しいんだな?」 「は  ぃ  ――――!」  腰を引かれて額に唇が落ちた。  そうされると僕の鼻は自然とトーマの喉元に誘導されるから……すんすん と鼻を鳴らしてしまう。  一日外で働いで濃くなった汗の匂いに潜むフェロモンはどこまでも扇情的で、鼻腔を通り抜けながら体のあちこちに火を灯していく。 「二日目、いただこうかな?」 「言葉のあやですっ! それに、先にお食事とお風呂を……」 「君を食べた後に、二人で入れば手間もなくなるだろ?」 「僕は食事じゃ  」  カプ と耳を齧られて、「びゃ」って声が出てしまうのは治せるんだろうか? 恥ずかしくて恥ずかしくて仕方がないから、せめて「きゃ」とかにしたいのだけれど。 「残業中に軽くつまんだから十分だ」  でも……と体を心配して声をかけようとする唇を塞がれて、トーマの手練手管に対抗する術を持っていない僕は流されるように服を剥かれてしまった。  風呂の 縁に腰掛けながら箱を眺めて、トーマは少し難しい顔だ。 「どう なさいましたか?」  湯船の中から、何を見ているのだろうと手元を覗き込んでみると、メタリックな王冠と共に0.01なんて数字も書かれている。  尋ねなくてもわかるその箱は…… 「いや、思ったよりも早く使用期限が切れるものなんだ な。と」 「し、ししし……しよう、期限なんてあるんですね」 「物質である以上はな」  ふむ と少し考える素ぶりをしながら、その箱をとんとんと指先で叩く。 「もし思っていた以上に劣化していたらどうする? 腸内に精液が残れば体調を崩してしまうだろう?」 「そ、そうなんですか⁉︎ 明日、新しいものをご用意しておきます!」  勢いよく答えた。 「明日?」 「いえ! 今から買いに行って参ります! ……コンビニで、売ってますよね」  恐る恐る聞いてみる。

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