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第108話

 僕を覆うように回された腕と絡みついた手が、なんだかトーマの独占欲を現しているようで、くすぐったく感じながら目を閉じた。  こんな僕にも、執着を見せてくれるαがいるんだと思うと…… 「う!」  ご機嫌で手を振り上げて「進めー!」と興奮しているルカはバギーが随分と気に入ったようだ。  予備で置いてあったらしいバギーはほぼ新品同様で、お礼が僕の手作りアップルパイじゃ全然釣り合わないものだった。  それに乗ってお出かけすると、普段と視線が違うからか、それともスピードが違うからかルカが大はしゃぎでとても嬉しそうにしてくれる。 「ルカさま、今日もいい天気ですね」 「るか、は、おひしゃましゅき」 「ままのも好きですよ、一緒ですね」 「いっちょ!」  わーっと両手をあげて喜ぶルカと、今日はお魚を求めて少し遠いスーパーへ行ってみようかと計画している。  佐知子さんと三千代さんが教えてくれたそこは、確かにすぐ近くってほどじゃないけれど、天気のいい日なら散歩も兼ねて行ってもいいかなって距離にあった。  ルカにはバギーもあるから買い物をしてもそこまで負担にはならないし…… 「――――なぁ」  さぁ道を渡ろうと左右を見渡していた時、背後から声をかけられてびっくりした。  振り返った先にいるのは一人の男性で、髭を剃っていないからか少しくたびれた印象は受けるだけで、印象らしい印象はそれだけの人だった。  それでも、αだとわかる威圧感があって、息苦しさのようなものを感じる。 「……はい」  知り合いではない。  なんとなくバギーを自分の後ろにくるように引き寄せて、「ご用ですか?」と硬い口調で尋ねる。  道を尋ねられるのかと一瞬思ったけれど、言い淀む雰囲気がそうじゃないって教えてきて、心の中をカリカリと引っ掻く不審感に僕はギュッとバギーの取っ手を握った。 「それ、うちの子なんだけど」 「……は?」 「人んちの子をさ、連れ回して、それって犯罪だってわかってる?」  ルカをさす指先は不躾だししかもルカを「それ」呼ばわりした時点でアウトだ、この人はただの不審者!  てか、散歩してていきなり犯罪とかなんとか言ってくるなんておかしすぎる! 「仰っている意味が分かりかねます」 「ルカをこっちに寄越せって言ってるんだ」 「…………」  はっきりと名前を呼ばれて、この男が行きずりの、なんの関係もない不審者じゃないってことがわかった。  サッと見回して、ナイフのような刃物は持っていないようだけれど……隠し持てるようなサイズのものはわからないから、注意を逸らさないようにしてじり と後ずさる。  この人が誰で、何を目的として声をかけてきたのかわからない以上、下手に刺激はできない。 「あんただって、連れ子なんていない方がいいだろ?」 「…………」  連れ子? 「協力してやるって言ってるんだ。どうせ、あんたもあの男目当てなんだろ?」  

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