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第110話
「ルカさま、大丈夫です、悪い人はもういきましたから」
そう言って腕に抱き上げると、小さな手で苦しいくらいきつく抱きついてきて……
「あっちいって!」
はっきりとした言葉を二人に投げつける。
「なんだぁ? このチビ」
「尾張 、子どもにそんな口の聞き方は良くないよ」
最初が間に入ろうとしたけれど、ルカは最初 に対しても「ふん」と荒げた声をあげただけだった。
知らない人に対しては警戒する方だったけれど、あからさまな態度はとったことがなかっただけに、ルカの様子に僕はオロオロとするしかできない。
「ルカさま? どうしました?」
「にぃ。なんでそんな子にさまつけてんだ?」
「え? 雇い主のお子さまだからだけど?」
顔を見合わせた二人の気配が一瞬で良くないものになったのは肌で感じてわかった。
怒りの感情はすぐにフェロモンに反映されて、僕をチクチクと責め立ててくる。
「ちょ……二人とも怒らないでよ。小さな子供もいるんだから」
僕で感じるってことは、ルカも感じるってことだ。
守るようにギュッと抱きしめて一歩引くと、二人はハッとして慌てて手を振った。
「ご、ごめ 」
「ごめんなさい、そんなつもりなくて……ただ、にぃ、どうして子守なんてしてるの?」
「それは…………それより、どうしてここに?」
会社をクビになったことはまだうまく説明できないできないから矛先を逸らすことにした。
二人はそれをわかってくれているんだろう、ちょっと顔を見合わせてから気まずそうにサングラスをいじいじとこね始める。
「 や、昨日?」
「夜にさ、メッセージが既読になったから」
「どうかなって」
「思って」
僕が見上げなきゃならない大男が二人、しどろもどろと体を小さくして様子を窺いながら喋る姿はなんだか笑い出しそうになってしまう。
そうか、昨日トーマとのことに浮かれて、元気にしてるよってメッセージを送ろうとして……そのまま腕の中でぐっすり眠ってしまっていたんだって思い出して、顔がポッと赤くなってしまう。
「にぃ、元気かなって」
「尾張 が、見に行こうって言うから」
「お前だって、行こうって言ったろ」
二人の言い争いは適当なところで止めないとどんどんとヒートアップしていくから、僕は割り込むように声をあげた。
「なんでここ知ってるの⁉︎」
「父さんたちも、心配してたからだよ」
最初 の返事はきちんとした答えじゃなかったけれど十分だった。
両親は、僕が当初勤めるはずだった会社をクビになったこともアパートを追い出されたことも、トーマの家で住み込みで働いていることも知っているってことだ。
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