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第111話
なんだかいたずらを見られてしまった気まずさはあったけれど、それを問い詰めないのは僕が自立するって言った言葉を両親が尊重してくれているからだろう。
「俺がこっそり、報告書見て、それで来た」
「…………もう、書斎は勝手に入っちゃダメだって言われてるでしょ? お仕事で大事な書類もあるんだから」
コツン ってゲンコツするふりをすると、尾張 は大きな体を小さくして「ごめん」って項垂れる。
インタビューに答えていた時のような堂々とした姿はなくて、いつも通りの、いたずらをして僕に叱られる弟の姿だった。
「最初 も止めてあげて」
「だって、俺もにぃに会いたかったし」
天使ちゃん なんて呼ばれる顔立ちでちょっと拗ねる表情を作られると、叱ったこちらが悪いことをした気になってくる。
「にぃは? 俺たちに会いたくなかった?」
「にぃが返事くれなくて、俺たち寂しかったよ?」
うるうると瞳を潤ませるのは演技だってわかってる。
僕に言うことを聞かせたい時、この二人はこの演技をするって理解しているのに、これをされると突っぱねることができなくなるのも事実だった。
「僕だって、寂しかったよ」
二人の表情がサッと明るくなり、ニコニコと屈託のない笑顔は勝負に挑んでいる時の鋭利さのかけらもないくらい幼く見える。
「でも、僕は今、こうして働いているからね。今も勤務中だから、またちゃんとお休みの日に会いにおいで」
「えっ……帰らなきゃダメ? ほら、荷物くらいなら持てるし」
「お米とか買わない? 俺たちがいたら買えるよ?」
弟たちはホント、僕の動かし方を良く知っている!
「そうだよね……さっきの人がまた来ても怖いし……」
僕だけならどうとでも逃げ切れるだろうけど、とにかくルカだけには怖い思いをして欲しくない。
交番に行って相談しておきたい、二人が写真を撮ってくれていたからそれを見せて……本当ならトーマに指示を仰いだ方が良かったんだろうけど、よくよく考えたら僕はトーマの携帯電話の番号を知らないし、トーマも僕のを知らないってことに気がついてしまった。
交番で相談をしてる間、後ろで二人がルカと遊んでくれている。
僕の家族だよって言ったのが効いたのか、出会い頭のように「あっちいって」と叫ぶようなことがなくてホッとした。
「 ――――野分……ルカくん」
警察官はそう口にした時、少し含みのあるような言い方をした。
まるで「あの子か」と言いたげな雰囲気に、僕は狼狽えて警察官の顔とルカを交互に見る。
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