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第114話

 初めて会った時はちょっと人見知りしたみたいだったけど、今は仲良くなれたみたいでホッとしてしまった。  それと同時に……今日の男のことも気にかかって……  確か、αとΩの夫婦の場合、親権は圧倒的にαが取りやすいって聞いたことがある。  αの方が経済的な余裕があるってことと、Ωが連れて行った場合、新しい相手がαだったら他のαとの子どもを受け入れられなくて虐待することがほとんどだからだって。  ……それに、ルカの母親は運命の番を見つけて、ルカを置いて出て行ったのにどうして今更?  僕がくる前の家の惨状は、確かに育児放棄って言われてもおかしくないけれど…… 「やっぱり聞いてみなきゃ、わからないかなぁ」   ルカがいる以上、トーマに誰かを愛した過去があるのは確実な話で。  聞きたくはない……んだけど、そう言うわけにもいかないよなぁって思うと、胸を締め付ける痛みで溜め息が出た。 「おかえりなさいませ」  今日もいつもより少し遅めで……帰ってきたトーマには濃い疲労の色が滲んでいる。 「お仕事、お忙しいんですか?」 「……うん、少しだけだけどね……」  とはいえ隠しきれない疲れは顔色を悪く見せていた。 「本日は消化に良いものをお出しします」 「えっ」  今朝言ったメニューはサーモンを入れたクラムチャウダーにコールスロー、かぼちゃとブロッコリーのチーズ焼き、デザートはさくらんぼとブルーベリーのサマークラフティを出す予定だったのだけれど…… 「クラフティ……」 「クラフティはお出ししますね、でもそれ以外は少し軽めのものにして、ゆっくりお風呂にお入りください。お風呂から上がったらマッサージします、疲れが取れるように!」 「マッサージ……」 「僕、マッサージ得意なんです」  こくこくと素直に頷くと、トーマは少し元気を出した顔でリビングへと向かった。  僕はそのままキッチンに行って、牛乳で緩めたクラムチャウダーでご飯を煮込んで黒胡椒を振ってリゾットに、焼いたかぼちゃは出汁と醤油で煮立ててやわらか煮に仕上げる。  コールスローは生野菜になるからちょっと出番は無しにして……品数は少ないけれど、時間を考えるとお腹いっぱい食べるのは控えたいだろうし、デザートは絶対に食べるだろうからこれくらいでいいはず。 「トーマさま、お食事……」  食事を運ぼうとリビングを覗くと、トーマがこちらに向けて人差し指を立てる。  耳に携帯電話を当てているところを見ると通話中なのだとわかり、素直にキッチンへと戻って片付けと明日の準備を始める。    今日は弟たちが一緒に買い物に行ってくれたから冷蔵庫の中身が潤っていて、明日のメニューは何にしようかと考えると楽しくて仕方がない。

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