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第117話
「お……おまわりさんにも、パトロールの強化をお願いしてあります。次に何かあった際は今日よりもきちんと対処できるように努めます」
これでどうだ!
「…………」
なのに、それでもトーマは何も言わずにじっと僕を見る。
熱のこもらないひたりと見据えるような目は、必要なことを僕が言うのを待っている時の目だ。
両親なら警備を雇うとか言い出すだろうけど……僕に提案できることはこれで全部で、他に思いつくのは監視カメラとか人感センサーのライトとか家に関することだ。
「? あと……僕でできることがあれば…………全力で取り組ませていただきます、けど……すみません、他に何を言っていいのか……」
「君は、今日のことでどう思った?」
「え⁉︎」
怖かった……とは言えない。怖がって何もかも放り出して、ルカも守らずに逃げ出す人間だ なんて思われたくなかったから。
「何事もなくて、ホッとしていま…………その、申し訳ございません、望まれている答えが私にはわかりかねます。教えていただけませんか?」
秘技! 殊勝なフリしてわかんないことは本人に聞く!
「都筑くんは……ルカの母親のルナをどう思った?」
いきなり、トーマの元妻の話を持ち出されても、家政夫に何を言えると思っているんだろう? この人は。お顔も知らず、性格も知らず……
「ルカさまにお会いしたいのではと……」
でもそれなら本人が来るよね?
「ルナは、……ルカを引き取りたいようなんだ」
疲れた声をさらに疲れさせて呟かれた言葉は懺悔のようだった。
「……そ…………そうですか」
ルカと離れ離れになってしまうのかもしれないと考えると、それだけで心にぽっかり穴が空いた気分になってくる。
「どう思う?」
「?? 寂しいです」
「アルファの子供は?」
「アル……あぁ、ルカさまのことですね」
トーマがどうしてそんな他人行儀な言い方をするのかわからず、拭いきれない不安を誤魔化すためにエプロンのポケットに入れてあるハンカチにそっと触れた。
「とても愛らしくて、利発で、何よりも人の心の機微をよく読まれます。もう少し子どもらしい生活を送らせてあげたいと思います。今はまだテレビを観て一緒に踊ることが一番楽しそうにしています」
「それはそうなんだが……都筑くん。君は………………応援上映に行かないかい?」
唐突すぎますよ旦那さま。
先ほどからの言葉の意図がわからないまま、応援上映って声を出してもいいってやつだったっけ? と首を傾げる。
僕たち大人には少し没入感が消えてしまうけれど、その分他のことで推すこともしやすくなるだろう。
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