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第118話
「君たちがよく踊っているアニメの映画だそうだ」
「あんぱん仮面ですね! ルカさまの今のお気に入りなんですよ」
テンポが早くてなかなかにダンスのレベルが高いのだけれど、そこが楽しいようでそれを踊るとルカはご機嫌だ。
「少し仕事がごたついているが、落ち着いたら行きたいと思っている」
「では日時が決まりましたら早めに教えていただきますと助かります。ルカさまは初めての映画ですよね、何を用意しておけばいいか調べておきます」
ルカの安全の話をしていたはずなのに、どうして突然映画鑑賞の話になったのか……もう少し防犯のことを話し合いたかったのだけれど、こんなに直角に話を変えられてしまったらどうしようもない。
でも警察にも連絡してるし、これ以上突き詰めると大事になっちゃうのは確かだ。トーマとしてはそれは本望じゃないんだろう。
だって、突き詰めていくとどうしてもルカのお母さんの話になってしまうから。
ルカの母親とは運命の番が見つかって別れたけれど、こうして庇うくらいなんだからトーマは奥さんのことをまだ大事に思ってるのかな? 好き……なんだろうか?
そう思うとちょっと胸が重苦しくてチクリと痛む気がするけど、僕には何か言う権利はない よね?
僕はただの家政夫だし。
だから、僕にできるのは不器用に逸らされた話に乗っかることだけだ。
「応援上映なら声も出せますし、ルカさまはお喜びになりますよ!」
「そうだが……君は?」
映画?
「好きですよ」
そう返すとトーマはちょっと恥ずかしそうに目を伏せて、安心したようだ。
「そうか……よかった」
「ルカさまの喜ばれる姿を思うと、今から楽しみです!」
きっとルカは大はしゃぎしちゃうだろうな〜夜は興奮して寝ないかも? なんて考えている僕に、トーマはそろりと尋ねかけてきた。
「君は?」
さっきと同じ言葉だ。
「楽しみですよ」
「いや、その、娯楽として」
「娯楽……として、楽しいと思いますけど?」
なんたって、映画館ってそれだけで特別感があってワクワクする。あんぱん仮面は赤ちゃん用品もたくさん出るくらいの幼児向け番組だったけれど、まったく楽しめないって話ではない。
僕の言葉にトーマは少し戸惑って、何か不安になっている様子だ。
「トーマさまが退屈でしたら、私とルカさまで観て参りますが?」
「なんで⁉︎」
「なんで?」
だって、トーマは普段幼児番組なんて見ないんだから、そうじゃない?
「私と行くのは嫌なのか?」
「??? いいえ。ご一緒できるなら、嬉しいです」
お互いぱちぱちと目を瞬かせながら見つめ合い……なんだか僕は齟齬を感じてしまった。
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