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第119話

「私は……君を誘っているんだが」  はい、誘われてますね。  ルカの面倒をみるのが僕の仕事なんだから、なんら不思議なことはなくて、「???」と首を傾げる。  僕の戸惑いを見て、トーマはソーダ色の瞳をゆらりと揺らめかせて、動揺しているようだった。 「君は、家政夫なのか?」 「はい? ……はい、そうです」  そんな改めて確認を取られると不安になってくる。 「僕は旦那さまとルカさまの健やかな生活を維持して守る、家政夫です!」  ぎゅっと拳を握って力こぶを作ってみたけれど……なんだか間違えてしまった気分になるのはどうしてだろう?  案の定、目の前のトーマの眉間にみるみる皺が寄って…… 「仕事、なのか」 「え?」  お給料ももらっているし、仕事と言っても間違いじゃない。 「そう……です」 「…………分かった。すまない。今日はもういいから休んでくれ」    疲れた目を閉じ、軽く振られた手とそらされた視線は最初の頃よりも冷ややかだ。  どんな時でも甘いものが食べたいと言っていた姿はかけらもなくて、僕が正しい答えを出せなかったからか拒絶ばかりが目に入る。先ほどまで映画に行こう! なんてのどかな話をしていただけにそれは顕著だった。 「あ……あの、なにか……胃に入れた方が、良くないですか?」 「いや、いい」  言葉に温度があれば冷たく感じるんじゃないかって口調はとりつくしまもない。  少し打ち解けて楽しく話していた姿は僕の都合のいい夢だったのかもしれないって思えてしまう態度だった。 「君とは今、話したくない」 「し つれい、いたしました」  言い終わった瞬間に息を止め、頭を下げて慌ててキッチンに行って夕飯を片付けて……急足で二階の部屋へと駆け込む。  布団に潜るまでは持つかなって思ったけど、その一歩手前で息を吸い込んでしまったし、堪えていた涙がボロリと溢れた。    幸い、部屋は真っ暗だから声さえ飲み込んでしまえばこの部屋で僕が泣いていることを知られることはない。  唐突に何もわからないままトーマに冷たくされて、僕はただただ混乱することしかできなかった。  昨日の夜、トーマが部屋に戻った気配がした後にそっと一階に降りて目元を冷やしたお陰で、今朝もいつも通りの顔だ。  洗面所の鏡に映るのは、Ωにしては粗い作りで黒目が小さいから目つきが悪く見える……万人受けはしないだろうなって顔。 「昨日は、トーマさまを怒らせちゃったな……」  家政夫としても中途半端になってしまったら、Ωとしての価値のない僕はどうしたらいいんだろう。  水や日に焼けて柔らかくない肌は触り心地は良くないし、抱き心地……は自分ではわからないけど、経験もないからまぐろになっちゃってるってわかってる。  楽しい話で盛り上げたりできる性分でもない、リンのように専門的な話ができるわけでもないし…… 「怒らせた理由もわからないままだし」

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