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第122話

「ベータをパートナーに迎えた場合、ルカの親権は妻に移りやすくなる。私の勤務形態や今までの近所の心象、警察や児相への相談もあったらしいから、それも合わせればルカはルナが引き取れるだろうから……」 「え……?」 「ルカの育成状況についての君の証言も加えれば、確実なものになるかもしれない」 「え⁉︎ トーマさま⁉︎ 何のお話をしてらっしゃいますか⁉︎」  大きな声で遮ってしまったオレをトーマは驚いた顔で見返す。 「ルカを……ルカの親権を元妻のルナに移す話だ」  苦しそうに絞り出された声は、それが考え抜かれて苦しんだ末に告げたセリフだと教えてくれたけど、今はそんなことに構ってはいられない。   「えっえっえええええ⁉︎ 待ってください! どうしてそんな話が突然⁉︎」 「……リンが、ルカはずっと母親を恋しがって、母に似た自分に泣いて縋り付くと教えてくれた。私にはそんなこと言えなくて、黙っているのだと」  そんなわけないって言いそうになったけど、グッと飲み込むことができた僕エライ。  僕がこの家に来る前のことは何もわからないんだから、ルカがリンに泣きついてそんなことを言ったかどうかは確認が取れないことを否定することはできない。  例え、リンの態度を見てて、そんなことある? って思っても。   「ルナも……ルカを恋しがっているとリンから聞いた」 「それは……」 「だから、ルカの親権を向こうに渡そうと思っている」  思わず胸ぐらを掴んだら、危うくトーマを絞め落とししそうになって慌てて手を離す。  今、僕は何を聞いたのかな? 至宝と言っても差し支えのないルカの親権を母親に移すって聞こえた気がするけれど……??  奥さんのことは会ったこともないからなんとも言えないけれど、昨日、ルカを誘拐しようとしてやってきた奥さんの番の男の様子を鑑みると、親権を渡してしまうのには一抹の不安を掻き立てられる。  ルカを「それ」と呼んだことを、僕は許せていなかった。  そんな人に、お宝であるルカを渡す⁉︎ 「正気なんですか⁉︎」 「正気も何も。ルカが気になると言ったのは都筑くんじゃないか!」 「気になりますよ! あんな天使のような子の傍に愛人だなんてっ! 教育によくないです!」  言い切った僕を見て、トーマはポカンと口を開けている。  いつもしかめっ面とかばっかりだったから、惚けた表情は珍しい。  そんな状態でもかっこいい顔は崩れてないんだから、αってホントにチーターだなって思う。 「愛、人?」 「はい! …………あ、愛人なんてはっきりしたものじゃ、なかったですか?」 『都合のいいオナホ』なんて、没収した弟たちのすけべ本に書かれてそうな言葉が口から出そうになった。 弟がこんなものを読んでる! って卒倒しそうになった本のキャッチコピーの立場になるなんて、考えもしなかったけど。

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