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第125話

「  っぼく……は、なんでオメガ なんだ  っ」  弾むように震える胸の内を直視したくなくて固く閉じた両目から、ポロポロと涙がこぼれ落ちて床を叩く。  小さな音だったけれど、それは荒い息遣いの合間を縫って耳に届いて…… 「……ぅ」  頭を押さえつけている手に力がこもった衝撃と共に、床の上に落ちた涙を覆うように血が溢れた。  項を噛まれるって思ったよりも痛みがないな とか、血がすごく出ちゃうから驚きだなって思っていたら、僕を押さえつけている力が緩む。  ガタタってよろけたトーマが棚にぶつかる音が響いたのを聞いて、どこかホッとすると同時にうさ寂しさに泣きそうになった。  不本意な発情でも、同意もなく項を噛まれても、それでもαを恋しく思う浅はかさに、震える体をギュッと抱きしめる。 「  づきくん! 都筑くん! 顔をあげて!」 「ぅ……」  涙で滲んだ視界の中で、トーマが何かを僕の口元に持ってきたのがわかった。  唇をこじ開けて、指で無理やり舌を避けて何かを入れる。 「っ⁉︎ にっ……」 「苦いだろうけれど、我慢してくれ。Ω用の緊急抑制剤だ」  反射的に吐き出してしまいそうになるような苦味が舌の下からじわりと染み出す。  思わず暴れそうになった僕を、トーマは強気抱きしめて、そのままじっと息を詰めるようにうずくまった。  跳ね上がるトーマの胸にピッタリと耳をつけると、恐ろしいほど早い脈が伝わってくる。けれどそれも呼吸が落ち着くにつれて穏やかなものになって、聞いている僕の心臓も柔らかな綿に包まれたように穏やかになっていく。 「落ち着いたか?」 「っ……はい」  深いため息を吐くトーマの腕は血まみれで、その間にα用の緊急抑制剤を打った丸い赤みが見えた。 「トーマさまっ血がっ……」 「ああ、……すまない。君を汚してしまった」  そう言うとトーマは服の裾を引っ張り、僕の喉元を拭き始める。  赤く染まっていくシャツと、血を拭った跡があるトーマの口元を交互に見て泣きそうになっていると、血の気の引いた冷たい手が頭を撫でた。 「項は噛んでない。安心するといい」 「えっ⁉︎」  サッと首の後ろに手をやってみるけれど、そこには痛みも何もない。  番契約の時には、項は噛まれても痛くないなんて話は聞いていたけれど……傷口自体がどこにもない。  安堵と……わずかな残念さに戸惑っている僕を押し退け、トーマは左腕を押さえながらふらりと立ち上がる。  押さえられた前腕からゆっくりと赤い筋が滲み出し、またひとつぽたりと床に赤い染みを広げた。 「トーマさまっ腕っ」 「うん……『名誉の防御創』なんて、君を傷つけたら意味ないね」

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