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第129話
まるで嵐のようだ と思ったのがルカに伝わったのか、「ゴロゴロ、みちゃい」とポカンと呟いたのが面白かった。
「ルカさま、おケガはありませんか?」
僕が見た限り、外傷はないけれど足首を痛めていたり、どこかぶつけたりしたかもしれない。一応念入りに手足を触らせてもらって……ルカにも尋ねたけれど、どこも痛くないと返されてホッと胸を撫で下ろした。
壊されたものも荒らされたものもざっと見渡した限りはなかったけれど、リンのことは報告しておかなくてはならないだろうってことで名刺の番号に電話をかける。
他の場所ならともかくリンが入ったのがトーマの部屋だったし、出ていく時には何か持っている様子もなかった。いや、ポケットに入れられるくらいのサイズのものだったら……?
大きいから価値があるってわけじゃない、むしろ小さい方が価値があったりするものもあるし、念のためだ。
「あ……忙しいんですね。承知いたしました」
随分と待たされた後、返ってきたのは取り込み中で出ることができず、折り返すというメッセージだけだった。
この番号にかけたら繋がるって思っていただけに、ちょっと肩透かしを食らった気分で……
なんとなく繋がって欲しかったけれど、これ以上は僕にはどうしようもなかった。
花の形に抜いたクッキーを天板に並べていく。
ルカが頑張って抜いたものは多少の崩れがあるものの、上手にウサギの形を保っていた。
「……焼き菓子、大好きだもんね」
今朝、トーマは何も口にすることができないまま出勤していった。僕の突発的な発情期に巻き込まれて緊急抑制剤を使ったせいだけど……それが申し訳なくて。
リンの来襲のことをダシにして電話をかけてみたが、取り込み中と言われてその後の体調は聞けずじまいだ。だから、僕ができることは好物を作って帰りを待つくらいで……
「? ちゅきー!」
「はい! お父さまの好物ですよ」
「ぅ? たべゆの?」
「はい、焼き上げて、おやつにいただきましょうね」
トーマによく似たルカに見つめられると、嬉しいけれど同時にちょっと複雑な気持ちにもなってしまう。
あんなことをしちゃった僕には、ルカの純粋無垢な瞳は耐え難いくらいキラキラと輝いて見えて、大人の汚い部分を思い知らされてしまった。
あまりの恥ずかしさに思わず絞り袋をギュッと握ると、ポッシュクッキーの生地が上からも下からも溢れてぼたぼたと天板に落ちて広がる。
慌てて生地を回収していると、タイミングを見計らったように家の電話が鳴り出して……トーマからの折り返し電話だと思い、急いで受話器に飛びつく。
「はい、野分で 」
『はぁ? どの分際でトーマの苗字名乗ってるわけ?』
「です」を言い終わらないうちに聞こえてきたきつい声に、「家政夫の立場からです」と言い返したいのをグッとこらえて、リンからの電話に丁寧に答えた。
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