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第130話

「リンさま、何かご用でしょうか?」  ってか、朝にあんなふうに襲来しておいてしれっと電話して来れる段階で、僕はおこ! になっていた。  ルカの前だから努めて平静を装うけれど、ルカがいなかったら受話器を10センチくらい離していたかもしれない。 『トーマが今日は泊まり込むから着替えと食事を届けろって』 「⁉︎ ……着替えとお食事ですね」 『何? 嫌なの? 何さまのつもり?』 「いえっすぐにご準備してお持ちします!」    小さな舌打ちが聞こえてきたけれど、そんなことどうでも良かった。 『危ないんだから、ルカを一人でお留守番させたりしないでよ? 留守番中に何かあったらあんたの責任だからねっ。何かあったら、あんたには辞めてもらうから』  吐き捨てるように言って切られた電話を見つめて、家政夫が自分の名前で電話に出ても問題だろとかツッコミたかったのを飲み込みつつ受話器を下ろす。  前回会社に泊まり込んだ時には何もできなかったことを思い出すと、こうやってリンを挟んででも連絡をくれたことが嬉しくてちょっと胸が弾む。  着替えと食事を届ければ、具合が良くなったかも確認できるし。   「ままの」 「はい。ルカさま、ちょっとお出かけしましょうか」 「ちゃんぽ、するー?」 「はい、準備ができたらバギーに乗ってお出かけしましょうか」  バギーが随分とお気に入りのようで、ルカはその単語が出た途端飛び跳ねて喜んでいた。  ルカと一緒に焼いたクッキーに、柚子胡椒をアクセントにした鶏ハムとクリームチーズ、ポテトサラダとベーコン、カレー風味のチキンとキャベツのマリネ等のサンドイッチと食事分のインスタントスープ、それとは別に生姜焼きをメインにしたお弁当の二食分を用意する。  着替えは何日分必要かわからなかったから、とりあえず二日分を用意して……  研究所に行くと決まってすぐ弟たちに入れた連絡には、すでにOKの返事が来ていて準備は万端だ。  弟たちに連絡したのには理由がある。  以前にトーマが紹介すると言ってくれた研究所併設の病院は、僕がずっとお世話になっている場所でもあったのだ。だからついでに、なくなりそうな僕の抑制剤も貰ってくれば一石二鳥になるって閃いた。  だからちょっと、僕が診察してもらってる間、ルカの相手をしてもらおうと思ったのだ、幸い二人とも快諾してくれて、これでルカの遊び相手が確保できて、一安心。    僕が薬をもらっていた病院と研究所は抑制剤の研究ではトップクラスだし、偶然といえば偶然だし必然といえば必然な話だった。  市販の抑制剤が効かない厄介な体質を恨んでちょっと不貞腐れてしまった時期もあったけれど……そんな僕を助けてくれた抑制剤の研究に、トーマが携わっているっていうのはなんだか運命的だと思ってしまう。  そう考えると、ちょっと運命的だな なんて、照れくさい気持ちになれた。   「さてと……」  持って行くものの最終チェックをしているとインターフォンが鳴る。  待ってましたと外に出ると高身長で体格のいい坊主が、ブランドジャージにサングラスで立っていて……ちょっとガラが悪すぎて、扉を閉めそうになった。

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