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第136話
「よかった! 君が倒れたって聞いてっ……ケガは? なんて無茶をしたんだっ」
「すみ ……すみません、だってルカさまが……」
「ルカはっ…………ルカのことは大事だ、でも君にもしもがあったら」
腕の中でぎゅうぎゅうに抱きしめながら頬を擦り寄せられて、嬉しくなって涙が滲む。
最後に見たのがふらついて青い顔で出て行くところだったから、向かい合って抱きしめてもらえたってだけで幸せだ。
「君に何かあったらなんて、そんな怖い思いをさせないでくれ……」
指の甲で頬をくすぐられて、「ごめんなさい」って小さく笑ってたらゴホンって大きな咳払いが響いた。
突然抱きしめられてすっかり忘れていたけれど、トーマの肩越しに父親と目が合って……お互いに気まずい感情を持て余したまま見つめ合う。
目が事情を説明しろってせっついてくるけど、どう言ったらいいのかわからないからえへへと誤魔化すように笑い返してみる。
「……野分さん、そちらは 」
痺れを切らしたらしく、咳払いしながら尋ねかけてきた。
「ぁっ……飯野社長っ彼は私の恋人です」
淀みもなくどん! と告げられた事実に、父だけじゃなくで僕もびっくりだ。
いつの間に恋人に⁉︎ 僕ってその立場で良かったの⁉︎ って疑問を遮るようにトーマは僕を背後に庇うようにして前に出る。
「今回の件で彼は一番の被害者で、息子を取り戻してくれた恩人です」
自分の前に立つトーマは僕に背を向けてるのに、抱きしめられている時よりも近く感じて嬉しかった。
そっと寄り添いたいなって胸がむずむずしたけれど、父の視線が突き刺さってるから自重することにする。
「ご子息が怪我をされた件に関しては、改めて謝罪をいたしますので……」
「謝らなくてもいいですよ!」
ひょこ とトーマの後ろから顔を出して言うと、二人の視線が僕に向く。
「僕は丈夫なんでこんなケガすぐに治りますから!」
「都筑くんっ姿を見せないでっ! 飯野社長はアルファだし 」
顔を出した僕に慌てるトーマをきょとんと見上げて、不思議に思いながらも父の方へと向き直る。
「お父さんもそれでいいでしょ?」
って続けた途端、トーマの瞳がパチリと瞬いて可愛らしい感じになった。
ちょっとした瞬間に幼くなるトーマの態度がたまらなく好きだって思うと、胸がギュッてなって顔が熱くなって照れくさくて、感情の乱高下にエヘヘと笑いたくなる。
僕はトーマにとってなんだったんだろうって問題も今さっきすっきりと解決したし、今なら満漢全席だって作れちゃいそうな気分で二人の間に割り込んだ。
「お父さん? って、どういう……」
「? あ、ご紹介します。父です」
こんな唐突に親に紹介するなんて思わなかっただけに、すごくシンプルな紹介になったけど仕方ないよね? っていうか、それ以外に説明する文章も思いつかないんだけど。
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