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第3話

人はそれを不運と呼ぶ。それは知っている。知っているけど。まさか自分がこんなに運がないなんて誰が思うだろうか。いや思うまい。 元カレは前あった時と同じ風貌でそこに立っていた。爽やかそうな短髪、ハッキリとした二重、誠実そうな鼻筋。浮気していたなんて誰が思うだろうか。いや思うまい。しかも俺が浮気相手だなんて誰が…。 「えーあの、ナンデスカ」 とりあえず声をかけてみる。どうやってここを突き止めたとか、そういうのは聞かない。だって怖いじゃん?探偵雇いましたとか言われたら俺一生逃げ回らないとだし。それならその真実に蓋をしてぐるぐるロープ巻いてぺいって捨てたろうがマシ。何兆倍もマシ。 元カレは、気まずそうな雰囲気を醸し出し…ているわけでもなく、ただ堂々と言った。 「なぁ、ヨリ戻そうぜ」 「……あ、サヨナラ…」 「ちょいちょいちょい」 俺がそっとドアを閉めようとしたところ、彼はドアの隙間に足をねじ込んでドアを閉めれないようにしてしまった。ヤクザか。いや、…そういやこいつ父親がヤクザとか言ってた気がする。そりゃなんでも知ってるわなーははは。 強烈な寒気に襲われつつも、もう一度ドアを開いてみる。元カレは相変わらず優し気な顔をして俺を見ていた。この笑顔に、俺は騙されてしまったんだ。だってこいつ、めちゃくちゃ顔いいから。 久々に顔の良さを感じさせられていると、彼は再度言う。 「ヨリ戻そうってば、な?」 「本命の子はどうしたんだよ…」 「振られた。そしたらお前の良さが分かったんだ。だから父ちゃんに頼んで居場所探してもらって、ヨリ戻してもらおーって」 クズだ。正真正銘、ドがつくほどのクズである。俺に散々罵詈雑言吐いてさっさと家から追い出して、出ていった先の母親のアパートからも夜逃げさせておいて、この仕打ち。なんだコイツほんとに。てか。 「最後にお前みたいなおじさんと添い遂げるとかマジ無理とか言ってなかったっけお前…?」 そう。この言葉である。あの時コイツは俺のことをおじさんと(なじ)ったのだ。40歳手前で既におじさんだななんて自虐たまにしてたけど、でも彼氏からそれ言われるのってだいぶキツイじゃん、精神的に。それを堂々とのさばっておいて、今更なんだなんだ。 俺がドアの隙間から元カレを睨みつけると、元カレはあろうことか足を更にドアの内側に入れドアを無理やり開くと、部屋の中に入ってきてしまった。 ああ、俺の平穏な部屋が…穢されていく…。

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