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第4話
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そうして部屋に入ったきた元カレは、わざとらしく加齢臭がする〜なんて鼻を摘んでいる。遊んで言っているのかもしれないけど、それ結構効くからな?
俺は玄関口から動かず、出てってくれないか、と小声で言う。45歳にもなって男1人に恐慄いてるのは正直恥ずかしいが、それしか手立てがないのだ。
「いや、だからヨリ戻そうって言ってんじゃん?省吾も俺のこと好きだったろ?」
都合のいい頭だ。俺に言ったことは忘れて、俺がまだ元カレのことを好いていると思い込んでいる。あまりにも、馬鹿だ。
「俺はもう、お前のことなんか」
「あ、もしかして新しい彼氏とかいる感じ?…それはないか!だって省吾って自分から恋人作るようなタイプじゃないもんなー」
「ぐ…」
痛いところを突かれた。そうだ、俺は基本的に内向的で、人から付き合おうと言われた場合にうんと頷くタイプの人間なのだ。この元カレも、元カレの方から付き合わない?と言われてうんと答えたのだ。それが運の尽きだったんだけど。
俺はもごもごと口の中で声にできない言葉を咀嚼する。どうにも、分が悪い。そもそもこいつ、さっきも言ったけど俺のことをおじさんと言ったのだ。当時39歳、現在45歳。さらにおじさんになった俺に興味なんてほんとに持つだろうか??
もしかして、他の理由があるのかもしれない。例えば借金のカタにしようとしてるかとか、父親が殺されてほかの組員から追われてるから家を転々としてるとか…。とりあえず、普通にヨリを戻したいとは思えなかった。
だから俺はそろりと後ろ手に玄関のノブを回し、足音を立てずそっと玄関を出た。そして、すぐに廊下を走った。後ろから怒鳴る声が聞こえる。あの声、別れた時と全く同じ声だ…!!
住む時は角部屋で喜んでたけど、今回はそれが裏目に出てかなり走らされた。どうにかこうにかエレベーターまで来たけど、ボタンを押してもなかなか上に来ない。仕方ない、俺は5階に住んでいるのだから。
そのうちにダッダッダッと走ってくる音が聞こえて、俺は慌てて左側にあった非常階段を使うことにした。捕まったら終わり、終わりなんだ。なにされるか分からない!
しかし俺の年齢を重ねてきた足は階段を下る度に縺れ、上手く下ることができない。そのうちに元カレに追いつかれて俺は腕を掴まれてしまった。
「は、離せ!」
「逃げることねぇだろ!」
「理由もなくヨリ戻そうなんて、信じられる訳ないだろ!」
「チッ…変に勘が働くよなお前って。6年前もそう、お前があんなことしなけりゃ俺はあの子と付き合えていたのにさ!」
やっぱり、あの子となにかあったんだ。だから俺を探してたんだ。
「っ離せ!……わ、」
勢いよく腕を振るった瞬間、ぐらり、と体が傾く。よく考えたら今日は雨が朝から降っていて、階段が濡れていたんだ。
だから、注意しなきゃいけなかったのに。
俺の視界には目をまん丸にして、腕を伸ばすこともできずただ呆然と立っている元カレが映っている。
ざまあみろ、これでお前は俺のことを捕まえられな―
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