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愛しい人 Side悠

 週刊誌の一件から、蒼が中々眠れていないことは気付いていた。  悠は、恋人として、パートナーとして、どうしたら蒼が俺に全てを委ねてくれるのか安心してくれるのか考えていた。  「蒼さん、大丈夫?」  レストラン『雪月花』の前田夫妻以外にも全てのスタッフが心配の声を掛けてくれる。  これは蒼の人徳だと思う。  誰からも好かれるのは、天性のものだ。  ただ、蒼はそれを知らない。だから傲慢にならない。 「ちょっと疲れているみたい」そう話すと、「お前、もっとちゃんとしろよ!」と怒られる。  皆、蒼が好きなんだな。とほほえましく思う反面、蒼に好かれたいと思う奴は男でも女でも、許さない。  そんな話を前田夫妻にしたら、若干引かれ「ストーカー」と呟かれた。  ストーカー気質なのは、わかっている。  蒼のことになると、冷静じゃいられない。  週刊誌騒動で、大分困っていたのに、記者に対してはイラつくことはなく、むしろ自分を責めているようで見ていて辛かった。  でも、蒼のお母さんとお兄さんが上京して、蒼の中で何かが変わったように思う。  何か一枚壁を作っていた雰囲気が、無くなったように感じる。  ――自信……なのかな。  明日は、レストラン『雪月花』の定休日だ。  そして、蒼の店もクリーニング業者が入ることになって、休みになっている。  もう、既に日付をまたいでいるけど、今日の夜から、のんびりできる。  蒼とイチャイチャできる。  悠の爪をやすりで磨いている蒼を見つめて、ニヤニヤしていると「悠、ちょっと気持ち悪いよ」と|窘《たしな》められた。  落ち込んだ顔を見せると、ふっと軽く笑う。蒼の唇に軽く口づける。 「一緒の休みなんて、初めてだな」  磨くのを終えて、道具を丁寧に片付けながら、蒼が言う。 「そうだね。年末年始以来かな? 五月連休もなかったし。どう過ごそうか?」  蒼を抱き寄せて聞くと、「いつもだと、ずっとベッドの上だな」という答えが返ってくる。  俺は、それでもいいけど、本当は蒼はどう思っているのだろう。  お互いの定休日が違う。  だからこそ、その前日から、翌日にかけて、飽きもせずに愛し合う。  本当は、何処かに出掛けたりしたいのかな……提案してみようかな。 「あ、蒼、あのさ」 「悠、実は、定休日を変えようとおもっているんだ」  ほぼ同時に発した言葉のせいで、蒼の言葉の意味がよくわからなかった。 「……?」  定休日を変えるって言った? 「昔馴染みのお客さんにも意見を聞いてね。ずっと休日の変更を考えていたんだ。おまえの……悠の店と同じにしようかと思ってる」 「……っ」  俺が前に一度、『雪月花』を『ロータス』と同じ休みに変更したいと漏らしたことがあった。  その時蒼は、そんな大事なことを自分の都合だけで考えてはいけないと強く言われた。  客の都合とかスタッフの都合とかもあるから割と簡単にするものじゃないと言っていたけど。  考えていたのか……。 「悠の店は、飲食店。規模も俺の店とは違うからな。合わせるなら俺の方だと思っていたんだ。でも、自分都合で変えるなんて勇気でなくてさ。それで客やスタッフを失ったらどうしようとか、色々考えた」  蒼が悠の目を真っすぐに見て言う。 「でも……嫌なことが起こりうる状況は、いつでもあるだろう? 怖がってばかりじゃダメなんだな。って最近、ホント、最近気付いたんだ」  伏し目がちに話す蒼を強く抱きしめる。遅いよな。と小さく呟いた唇に、キスでふたをする。 「んっふっ」と色気のある声が蒼の口から漏れる。  その声に欲情して、さらに深く口づけた。  軽く、胸を叩かれて、口づけを止めると「まだ話の途中だよ」と睨まれた。  自分の顔がにやけているのがわかる。  蒼が咳払いをしたあと続いた。 「定休日を一緒にするのは、これからも……同じ人生を歩みたいとおもっているから。あと……悠が一緒にいると……よく眠れるんだ」  頬を朱色に染めた蒼の告白。  嬉しくて死にそうだ。  定休日が同じというだけでも、これからの二人の時間がより豊かになる。 「蒼、俺、すごく嬉しい。俺もずっと一緒に……人生を歩みたい」  蒼の手を握り、見つめ合う。  手の甲にキスをして、唇にキスをする。軽く口を合わせながら、「今日は、俺の部屋に行こう」と三階に連れていく。 「え? だってそこは……」  躊躇う蒼を連れていく。  三階は、大きな窓があって、そこはカーテンがない。  幸い同じ高さの建物は面していないが、広い空と遠くに見えるビルやマンションは丸見えだ。 「今日は、月明かりが綺麗だから。部屋の明かりはつけないから。見せて。蒼」  ゆっくりと蒼のパジャマを脱がす。  胸にあるぷくりと赤くなった小さな突起を舌先で弾くと、蒼の鼻から抜けるよがった声が聞こえる。  たまらない。  全部を脱がして、丸裸にして、月明かりだけの蒼を見つめる。  見られていることに恥じらっているのに、蒼のペニスは既に力を帯びていて、風呂場で準備した後ろの|窄《すぼ》まりも潤んだ状態で、期待した眼差しをくれる。 「綺麗」  自分の服を脱ぎ捨て、蒼を抱き寄せて、唇と首筋、鎖骨にキスをしてなぞる。  蒼の手を蒼自身の昂りに握らせ「自分でしてみて」と耳元で囁く。  困った顔をしながらも、細い指で自身を|擦《こす》って、身を捩らせている。  ああ、やばい。  可愛すぎる。  初めて見る、蒼の自慰に生唾を飲み込んだ。  俺に見られて、気持ち良くなっている姿が、たまらない。  悠も自然と自分の昂りを掴み自ら擦っていた。 「蒼、自分でお尻いじって。見たい」  更に、眉根を寄せて、恥ずかしがりながらも足を広げて見せてくれる。  蒼の指が、自らの窄まりに触れ、くぷりと指が飲み込まれていく様を見つめる。 「あ、ああっ、うっ、はぁん」  細い指を動かして、よがっている姿に、悠の快楽が振り切れてしまいそうになる。 「ゆ、ゆぅ、触って……」愛しいい人からのお願いに、すかさず蒼の昂りを擦ってあげる。 「はぁ、あぁぁ、も、もう、でるっ」  悠の手の中で、蒼が吐精したが、そのまま更に擦り続けた。 「へっ? まって、まって、また、あぁぁ、また、でちゃうっ」  蒼の腰ががくがくと揺れ。そして、さっきよりも激しく先端から溢れ出した。  ぐったりと横たわって、「バカ」と小さくつぶやく蒼の眼から涙がこぼれる。  「ごめん。でも可愛かった」涙を舐めて、蒼を強く抱きしめた。  「クセに……なりそうだから、もうやめて」  小さな声で言われたその言葉に|煽《あお》られた。  もう、この人は。  蒼を上に乗せて、自分のいきり立った雄を咥えてもらうように腰を動かす。  「俺の舐めて」  上になった蒼のお尻を撫でまわしながら、蒼のまだ力のないペニスを口に含む。ひくひくと動くところに指を這わせると、期待するかのように水音を立てて、吸い付いてくる。  蒼も口に含ませながら、舌をつかって、俺を快楽の波に乗せてくれる。 「気持ちいいよ。蒼……」  蒼の動きが激しくなってきたところで、もう、中にはいりたいという欲求から蒼を押し倒した。  腰を高くあげ、濡れた窄まりに埋め込んでいく。 「あぁぁ、うっ、はぁぁん」  全部が埋め込まれた後、しばらく馴染むまで動かない。  頭を横に振りながら、喘ぐ蒼の姿に俺自身も達してしまいそうだからだ。  下から潤んだ瞳で見つめる蒼が|煽情的《せんじょうてき》で、独占したい欲求が体中と脳内をかけめぐる。  ゆっくりと律動をはじめながら、見つめ合う。  動かしていくと、蒼の中が締め付けて、俺を離さない。それが心地よくてたまらない。 「蒼、俺を離さないで」  激しく動かしていくうちに蒼の昂ぶりも力を戻してきた。  蒼の中にある気持ちの良い場所を擦り、乳首を指で弾くと、なまめかしい声が上がる。  さらに、中を締め付ける。  「もう、イク。蒼、あおい」  「ゆぅ、おれも、 あぁ、あぁぁぁ」  快楽の海に溺れるように、二人は絶頂を迎えた。      「月が綺麗だね」  布団の上で、寝転がりながら蒼を後ろから抱きしめて、窓から見える空を見ながら言う。  我ながら、ロマンチストだな。なんて思う。  腕の中にいる愛おしい人と、これからの人生を共にする。  今回の週刊誌騒動は、きっと、俺にも同じようなことが起こるかもしれない。  人の噂やソーシャルネットワークは、悪意がなくとも、広がってしまうことがある。  それによって傷つくことがあるかもしれない。  レストラン『雪月花』に関してもいえることだ。  夢だった自分の店をもつことを実現できたのだから、続けていけるようにしなくちゃな。  蒼は、お店とお客のことを一番に考えてるし、スタッフへの気遣いも忘れない。  尊敬する人。  愛しい人。  大事な人。  この人を傷つけたくない。  人間は、意図せず自分とは違うタイプや、珍しい人に特別な視線をおくりがちだ。  男同士で手をつないで歩いている姿をじろじろと見る視線や、嘲笑するような雰囲気で見る人もいる。  何度もそんな現場に立ち会った。  今時、珍しいこともないとは皆が思っていることだろうけど、それは頭の中だけで。  実際に近くにいると特別な目で見てしまうものなんだろう。  蒼が、恐れるのもわかる。  家族にも言えずに、ずっと、一人で戦っていたのだ。  ふと、実家に帰った時のことを思い出す。  俺の家族は、付き合っている人が男と聞いたらどう思うのだろう。  自分の家族のことながら、全く想像が出来なかった。  いわゆる一般的な反応は、するのかもしれない。  悲しんだり、怒ったりというマイナスな反応。  不安……蒼を傷つけることになるのではないか。  でも、隠しておくことはしたくない。  この年末年始、蒼を連れて帰ろうかな。  月が見えなくなった空をぼんやり眺めながら考えていた。  蒼の肩が上下し、寝息が聞こえはじめていた。

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