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その後 1.こんなに飢えていたとは

 樹は自分がこんなに飢えているとは思わなかった。毎日のように、いや、毎日渡辺を求めてしまう。しかも何度も。  “俺は経験が浅いから、樹がしたいことを言って欲しい。遠慮はいらない。誘ってもらった方が嬉しい。樹が俺を欲しがっているのがわかるから”  浅ましいことを言ってはいけないと我慢していたけど…渡辺の言葉を聞いた樹は考え直した。確かに、自分を欲してもらえると嬉しい。だから自分の欲望をきちんと口にすることにした。  相手が渡辺だと思うと初めての頃のように恥ずかしかった。それでも感じる部分を伝えたり、もっとして欲しいと伝えた。  体を離そうとする渡辺に、つながったまま寝たいと頼んでしまったこともある。昨日もベッドで抱かれたばかりなのに、玄関で渡辺を見た途端欲しくなって“ここでして”とせがんでしまったこともある。  樹が首まで真っ赤にして恥ずかしそうに自分を誘うのがたまらないのか、渡辺は何度でも樹に応えた。それどころか、樹の腰が立たなくなるまで攻めた。そのせいか、樹の体はあっという間に渡辺に染まっていった。  昨日も一回でやめようとする渡辺を樹が誘ってしまい…意識が飛ぶまで抱かれた。朝起きたら、すでに渡辺は出勤していて…寂しくなった樹は布団に包まった。  ―渡辺さんの匂いがする…  そう思いながらウトウトしてしまい、再び目を覚ますとお昼を回っていた。それでも渡辺の匂いに包まれていたくて、樹は渡辺のことを考えながら布団に包まり続けた。  *** 「ただいま」  玄関を開けても樹が飛び出してこない。 ―今日はオフのはずだから…まだジムにいるのか?いや、靴がある。  おかしいと思った渡辺はリビングを見て異常に気づいた。  朝のままだ。いつもなら掃除をして綺麗に片付けられているはずなのに…心配になった渡辺は樹の部屋を開けた。誰もいなかった。もしやと思って自分の部屋に入ると…ベッドの上で布団に包まった樹を見つけた。 「樹!大丈夫か?」  昨日も意識が飛ぶまで攻めたから…心配になって布団をめくると裸のままの樹が驚いたように見上げる。 「渡辺さん?仕事は?」 「なに言ってるんだ。もう8時だぞ。仕事に行って帰ってきた」 「え…」  樹は布団に包まって渡辺を思いながら丸一日過ごしてしまっていた。 「どうした。調子悪いのか?」 「ちがう…ただ…その…」  真っ赤になって口ごもる樹の頭をグシャグシャにかき回しながら、渡辺がベッドに座る。 「どうした?」 「寂しくて…渡辺さんが…いないから…匂いがするから…布団に包まって…渡辺さんのこと考えてた」 「一日中?」 「うん…」  愛しさにたまらなくなった渡辺は裸の樹を抱きしめた。体の奥から何かが込み上げてきて涙がこぼれそうになった。 「渡辺さん?」  黙って自分を抱きしめる背中に樹は腕をまわした。 「呆れた?」 「ああ。愛しすぎて呆れた」  微笑む渡辺の頬に樹は何度も口づけた。 「ずっと渡辺さんのことだけ考えてたんだよ。だから…ご褒美ちょうだい」 「腹は空いてないのか?」 「空いてるけど…ご飯より先に…渡辺さんの…飲ませて…」  吐息混じりにささやかれ、一瞬その場で樹を押し倒しそうになった渡辺がぐっと堪えて愛しすぎる人を抱き上げた。 「それなら、先に体を洗ってくれるか?」 「いいよ」  渡辺の首に腕をまわした樹がフワッと微笑んで、チュッと頬にキスをした。

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