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再会〈6〉

 しばらくすると、ようやく俺の感情も穏やかになった。   「柊二さん。野崎先生からはディープキスはするなよって言われました」 「それは、残念だな」  柊二さんは薄っすら笑った。 「でも、唇を湿らす程度の水分はいいって言われたから、今から人命救助のキスをしますね」  柊二さんは、じゃあそうしてくれ、ってまた笑った。  俺は一旦店に行くと、水で湿らせたガーゼと昆布出汁に牛乳を混ぜたものとほんの少しの白ワインを用意した。  俺は自分の唇を湿らすと、柊二さんの唇に触れた。少しカサついた柊二さんの唇は、俺の唇を感じようとしているのか少し動いた。そして、俺は折った座布団を枕の下にいれて頭の位置を少し高くした。 「柊二さん。ほんの少しですけど」  柊二さんの口元にスプーンを当てた。数滴の液体が口の中に入った。柊二さんは口を閉じて味わっているようだ。 「昆布出汁か?」 「はい。牛乳も混ぜています。グラタンみたいになってませんか?」 「それは、無理があるな。でも美味しいよ」 「じゃあ、これも。野崎先生には内緒ですよ」  氷で冷やしたスプーンに数滴の白ワインを入れて、また柊二さんの口に入れた。柊二さんは目を見開いた。 「白ワインか…」 「はい。よかった、わかってもらえて」  俺はガーゼで柊二さんの唇をそっと拭いた。   「なぁ、研一…俺の体を拭いてくれないか?」  風呂に入れていないから言ったのではなくて、柊二さんは旅立ちの準備をしようとしているんだと、俺はそう理解した。 「わかりました。じゃあ準備しますね」  俺はまず、エアコンを付けて、部屋の温度を上げた。そして湯を沸かしている間に、考えられる必要な物を用意した。  最初に髪を固く絞って温めたタオルで髪を拭いた。それから顔を拭いて、髭も剃った。手足を一本ずつお湯に付けて軽く擦った後、爪を切った。 「柊二さん、疲れてませんか?」 「大丈夫だ。丁寧にしてくれるな、ありがとう」  部屋の中もだいぶ暖かくなってきた。俺は、柊二さんの服を脱がして、俺も裸になった。 「お前も脱いだのか?」 「だって、脱がないと頭から水ぶっかけるでしょ?」 「よく、覚えてるな」 「そりゃそうですよ。デコピンも、痛かったし」  柊二さんはまた笑った。水が溜まりそうなくらい凹んでいる腹が揺れている。逞しかった体躯は見る影もない。背中のあの創も、痩せて皺が寄っているせいで、創がどこなのかはっきりとわからない。体を拭き終えると、保湿のローションを塗った。 「大丈夫ですか?」 「ああ、俺は何もしていないからな。そんなに心配するな」  俺は柊二さんの声の調子を信じた。    俺は柊二さんの股間に手をやると、手のひらで掬い上げてその先っぽにキスをした。そしてそっと口に含んだ。柊二さんを興奮させて命を縮めるかもしれないと思った。けど柊二さんも絶対に望んでいるはずだ。    俺の指で周りきらなかったあの時の柊二さんだったら、俺はかなり大口を開けなければいけなかっただろうけど、今は容易にできた。唇を窄めて舌を動かしてみた。柔らかかった。柊二さんが俺のモノを握っては、柔らかいままだな、とよく言ってたの思い出した。   「情けねぇよなぁ…せっかくお前にいいことしてもらってんのに、勃つどころか硬くもならねぇなんてな…」  柊二さんは興奮どころか落胆していた。 「柊二さんのチンコ、はんぺんみたいだ」 「なんだよそれ…食いたかったら食ってもいいぞ」  柊二さんの言い様に、俺は思わず笑ってしまった。    柊二さんの体の上で四つん這いになった。本当は覆い被さって抱きしめたかったが、今の柊二さんには細い俺の体重ですらかなりの負担になるだろう。俺はゆっくりと頭を下げて柊二さんに頬ずりをした。そして軽く唇を合わせた。 「研一…さっき俺の体に塗ってくれたヤツ…あれを俺の指先に塗ってくれないか」 「…?……はい…わかりました」  俺は柊二さんの体を跨いだまま膝立ちをして、柊二さんの枕元の方に手を伸ばした。そして柊二さんの右手の指にローションを塗った。    何がしたいんだろう? 「これでいいですか?」 「ああ…俺の役立たずの代わりだ」  柊二さんはそう言って、俺の太ももを一旦掴んでから、股ぐらを越して俺の肛門に指を伸ばした。  そうか…あの時の約束。 『次に会ったらその時はお前のこと…ちゃんと抱いてやるからな』  俺は、柊二さんにまた俺の初めてを奪われるみたいだ。 「研一…頼むから力を抜いてくれよ」  柊二さんは腕を持ち上げ続けるのも辛そうだ。俺は柊二さんの肘が布団に着けるように腰の位置を下げた。 「柊二さん、俺、初めてだから、優しくしてくださいね」 「ああ、わかってる」  柊二さんは声を立てずに笑った。  柊二さんの弱々しい指先が俺の肛門の中に入り込もうとしている。俺は神経を集中させて肛門周りの筋肉を緩めようと努めた。  少しだけ入った。何か変な感じがした。今までにない感覚。俺は穴を広げようと頑張った。柊二さんの指が微かに動くのがわかる。柊二さんの腕の横でただぶら下がっているだけのオレを見た。ああ…少しだけでいいから勃たせることはできないのか…いやほんの少しでも大きくできたら、柊二さんに俺が感じていることをわかってもらえるのに…。  俺はきっと切ない顔をしていたんだろう。柊二さんは、また薄っすらと笑った。 「これが今の俺の精一杯だ。悪いな」 「ううん。何かエッチな感じがしました。でも俺のが簡単には勃たないの知ってますよね」 「そうだったな」  柊二さんは指を抜くと、ぶら下がってるオレを掴んだ。 「可愛い顔をしてるくせに、ここは頑固だ」  柊二さんは、大きく息を吐いた。疲れたみたいだ。 「柊二さん、少し休みましょう。俺が添い寝してあげますから」 「ああ、そうだな…」  俺は、柊二さんの首の後ろに腕を通して、柊二さんがいつもしてくれたように腕枕をした。そして柊二さんをそっと抱きしめるように体を寄せた。

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