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第5話 荒野の終わりと、炎の獣人

 街にリサイクル品を売りに行くという善蔵のトラックの後ろについて、バルドは赤いオープンカーを運転していた。  なぜ運転手が変わっているのか?  蓮が体力の限界で、助手席でスヤスヤと眠っているからだ。  バルドは蓮の寝顔を横目に見ながら、ニヤニヤと上がる口角を抑えられない。  ジャラドの催淫作用のせいだが、今までになく乱れた蓮はとても可愛いかった。  しかし、同時にもう絶対にジャラドは食べさせないとバルドは誓った。  もしもあんな状態の蓮が他の人に見られでもしたらと思うと……。  居もしない相手を思い浮かべ、バルドは鼻息を荒くした。  アクセルを思いっきり踏んでやりたくなったが、安全運転だと心を落ち着ける。 「バルド、うるさい……」  助手席でモゾモゾとバルドの上着を被り直しながら蓮は寝起きの声を出す。 「何も言ってないぞ」 「鼻息……興奮すんな。もう無理だ……」  蓮はそれだけ言うと、頭まで上着を被ってしまった。  バルドは静かに呼吸を整える。  眠り姫を起こさないように。 「ここが街の入り口だ。俺は隣町まで行くから、ここまでだ。良い旅にしてくれ」 「本当にありがとうございました」  善蔵は、斜面に白い家が並ぶ山間部の街まで送ってくれた。  昨日、蓮が行ってみたい屋台があるのだと目的地を言っていたからだ。 「屋台、やってると良いな」 「はい……」  まだ少し寝ぼけている蓮の、ポヤッとした顔を見て、善蔵の顔は赤くなった。  大袈裟に笑いながら、自分のトラックに乗り込み、手を振ってくる。  蓮が手を振り返したら、トラックは右往左往しながら走って行った。 「大丈夫か?事故らないと良いけど」 「うん、そうだな……」 「まだ眠いのか?店を探す前にどこかで休むか?」 「ん~、腹へった」 「翠さんが、サンドイッチ作ってくれたぞ」 「……食べる……」  昨日、あっさりとフったのにも関わらず、翠の優しさに嬉しくなる。 (あの子は街に住んだら危険だな。良い見合い相手とかがいれば良い)  昨日出会って、告られて、フった相手にこんなに感情を動かすなんて、蓮も驚いた。  それもきっと、バルドのせいで、バルドのおかげだろう。  街の外れは草原に繋がっている。  そよぐ風が気持ちよく、蓮とバルドは翠のお弁当を広げた。  ピッグルハムがメインのサンドイッチは、知らない葉物も入っており、多少警戒しつつ蓮は頬張った。 「うま……素朴な味……寝起きにちょうど良い」 「翠さんは料理がうまいな。良いお嫁さんになるぞ」 「んぐっ……」  バルドの一言に、パンを飲み込み損ねる。  蓮が咽せると、バルドが水をくれた。 「ん?なんだこれ……」  水を一口飲んで、蓮は顔を顰めた。なんだか妙な味がしたのだ。 「シャバタンの水分だ」 「なんか痛んでないか?」 「そうか?んーちょっとダメになってるかもな」  バルドも一口飲んで渋い顔をする。  蓮は、ジトリとバルドを見つめる。 「………………」 「悪かった。でも、あとはダブダブの水分くらいしか……」  むしろ、荒野で水分の補充なんて出来るわけが無いのだから、これだけでも持っていてくれたことは感謝なのだろう。 「いや、俺が寝ぼけてないで、先に街に水を買いに行けば良かったんだ。今から行くか」  蓮は立ち上がり、大きくあくびをした。 「蓮が寝不足なのは、ジャラドのせいだろ。それに俺も、無理させたから」 「…………ジャラドさ、少し採ってくれば良かったな……」 「はっ?!ダメだ!!もう絶対に食べさせないぞ!」 「なんでだよ。お前も楽しかっただろ?」  昨晩の行為を思い出し、蓮は身を捩る。  バルドはそんな蓮を抱き寄せ、強く強く抱きしめた。 「確かに可愛かったけど、俺はいつもの蓮がいい。俺が、蓮を気持ちよくしたいんだ。ジャラドは、今度はモミモに漬けてやる」  バルドは何かに敵意を向けながら、蓮を愛おしそうに抱きしめる。  蓮もバルドに腕を回して、愛しさを伝え、抱き合った。  草原にそよぐ風は気持ちが良い。  さぁっと耳に掠める風の音に、蓮は目を細めるーー ーズドン!!ゴォォォー  突然、草原の一角が焼き払われた。  バルドは蓮を抱き上げて、その場を離れようと急ぐ。  すると、後ろから焼き払ったであろう人物が大きく笑った。 「悪いな、驚かせたか!?」  その容姿は、ライオンの獣人ーーー。

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