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第6話 炎の獣人と銀のバングル
笑いながら火魔法を放ったのは、大柄なライオンの獣人。
褐色の肌と、バルドよりも濃い色の立髪が立派な、中年の男だった。
「悪かったな。ちょうどあそこに魔鳥が見えたから狩ろうと思ったんだけど、失敗だな。逢引きの途中だったか?」
悪いと言いつつ、あまり悪びれない男は、焼き払った箇所を見て魔鳥がいないことに笑っていた。
バルドは呆気に取られつつ、抱き上げていた蓮を下ろす。
蓮も呆けたようにその男を見ていた。
「あ……いや……」
バルドがなんとなくで返事をする。
あまりに突然のことで驚いたのか、珍しく挙動が不審だ。
「ん?逢引きじゃなかったか?イチャついてたろ。キスするのかと思って見てたけど、魔鳥も逃したくなくてな」
(いつから見てたんだよ)
蓮は男へ多少の不信感を抱きつつ、バルドの様子を伺う。
バルドの顔は驚きで固まっており、何か言葉を探しているのか口をパクパクとさせている。
ジワリと額に汗を滲ませて、男に手を伸ばした。
男がそっと、バルドから目を逸らす。
「あの……俺……俺ら……」
言いながら、興奮したような表情に変わっていくバルドは、男の手を握った。
「すごく似てますね!!」
ニカっと笑ったバルドに、男も同じ顔を返す。
「そうだな!」
ブンブンと握手をして手を振り合う二人は意気投合したようだ。
バルドのコミュ力に蓮は呆気に取られた。
(普通に危険人物だろ)
「なんだ、旅行中だったのか。水が欲しいなら、街に入ってすぐの店に売っているぞ。珍しいものなら屋台街に行け。俺も夜には店を出してる。今日の狩りが上手く行けばな」
「料理人なんですか!?俺もですよ!そこまで一緒なんて、絶対食べにいきますね!」
バルドは簡単に約束をすると、蓮に振り返り、視線だけで良いよなと言ってくる。
はいはいと言う意味を込めて蓮は手を振った。
ライオン獣人に教えてもらった店は、荒野を行く人や抜けて来た人を相手に大量の水を売っていた。
とりあえず、今飲む分だけを買って、そこから続く屋台街へと蓮は目を向けた。
道を挟んで両側に、様々な屋台が並んでいる。
海辺の市場にも似た雰囲気だが、飲食店以外にも、雑貨や生活必需品などの屋台もあり、見て回るだけで楽しそうだ。
「なぁ、バルド。アクセサリー屋に行かないか?」
「アクセサリー?欲しいのか?」
「あー、結婚式……するならさ、必要だろ?」
左手を見せてやれば、バルドも気付いたようだ。
満面の笑みを向けてきて、首を縦に大きく振った。
「お客さんのは、うちにはサイズが無いですね」
アクセサリーの屋台の前で、バルドは項垂れた。
「作ってもらうことはできますか?」
「構いませんけど、少し時間かかりますよ。お客さんたち旅行で来てるんですよね?」
「はい、そうです。どのくらいかかりますか?」
「一ヶ月は欲しいですかね。今材料ないんで、採りに行かなきゃならないんです」
屋台の店員は、困ったように山を見上げた。
採りに行くと言うのは指輪の鉱石のことなのだろう。
すぐに手に入ると思っていた蓮も、落胆する。
一ヶ月後に出来上がったとして、届けてもらうにも時間がかかり過ぎる。
別の店に行くかと腰を上げようとした時、たくさん並んでいるアクセサリーの中から、綺麗なバングルを見つけた。
「それ、見せてもらえますか?」
「好きに手に取ってもらって構わないですよ」
そう言いつつ、店員はバングルを蓮に手渡してくれる。
おそらく純銀製で、輝きも良く、デザインもシンプルで蓮の好みだ。
手を通せば、蓮の白い肌にもよく馴染んだ。
「似合いますね。バングルをペアで付けている人たちも居ますよ。指輪だとあからさまだからって」
「そうか……アリだな。おいバルド!」
蓮は、地面に両手を付いて項垂れる大型ライオンの手を引いて、顔を上げさせた。
「なんだ?指輪はないんだろ?」
「これはどうだ?どうせ指輪は仕事中に外すだろ?これも外すけど大きい方が無くしずらいだろ」
シャラっと手首に付いたバングルを見せれば、バルドの表情が明るくなった。
「蓮、似合うな。格好良い」
「だろ?これくらいなら、俺は仕事中でも付けていられる。バルドも付けてみてくれ」
「よし」
バルドは勇んでバングルに手を入れる。
しかし案の定、入ったのは指までだった。
「ダメだ……俺はデカ過ぎるんだ……実家にも帰れないほどだしな……」
「それはお前のせいじゃないだろ」
バルドが実家に帰れないのは、ビーバーの家にライオンが入ろうとするからだ。
これもダメなのかと蓮はバングルを戻そうとしたら、店員が閃いたと手を打った。
「ここ、ここはどうですか?」
店員が屋台の屋根から出てきて、バルドの背中に回った。
バルドはなんだと後ろを向こうとしたところで、尻尾を掴まれビクリと動きを止める。
「んっ、なんですか……」
多少声が上擦り、バルドは身を捩る。
「多分、尻尾なら入るかと」
店員がバングルを尻尾に通すと、ピッタリと房毛の下で止まり飾られた。
「おっ?おぉぉっ!どうだ?蓮?」
バルドは尻尾を振りながら、嬉々として蓮に見せてくる。
蓮もニコリと笑みを返した。
「いいな。これにするか」
「ありがとうございます。特別に名前掘りますよ。すぐに出来ますから」
店員のサービスに、二人は目を合わせてお願いしますと声を揃えた。
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