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【2】-04
彼女が語った話である。
マンスリーマンションを契約したんです。
イベント関係の仕事を、していて――そうです、そういう、臨時の催事場の仕事です。それで結構長期間、二か月くらい……本社から離れた場所に拘束されることになっちゃって。
通勤、できなくもない距離なんですけど、ちょっと辛くて、友達に相談したら安いところがあるよって、紹介されました。
そこは勤務地と近くて、ロケーションとしては完璧だったんです。
駅からは十五分くらいで、まあまあ許容範囲だし、周りにスーパーはないけどコンビニはあるから、よくもないけど悪くもないな、って感じで。
通勤に疲れてたし、全然払える金額だったから、思い切って借りちゃったんです。なんだか新しい事を始めるみたいで、ちょっとワクワクしていました。
ワンルームの部屋は簡単な家具付きで、すぐにでも快適に過ごせる状態でした。
マンスリーマンションて初めて契約したんですけど、食器とか調理器具とか、そういうのもちゃんと揃ってて、すごいなって……全然ホテルより快適で、びっくりしちゃったんです。
私は相場も知らなくて、こんなにいい場所でこんなに安いなら、マンスリー暮らしの方が得なのかも……とか考えちゃうくらいでした。勿論、その物件が異様に安かった理由は、ちゃんとあったんです。
女が出るんです。
そう、えっと、……女です。
夜になると、南側の窓の前に、女が立つんですよ。いいえ、外じゃないです。部屋の中に、立っているんです。
夜目が覚めると、窓の前に立っている女が目に入るんです。初めてその女を見た日は、怖くて部屋から飛び出して、駅前のコンビニで朝まで過ごしました。終電も終わってたから、友達も来てくれなくて……。
すぐに管理会社に連絡したんですけど、もしご不満でしたら解約をおすすめしますって言われて。きっと、そうやってみんなすぐに出てっちゃって終わりなんですよ。マンスリーマンションなんて、別に、嫌なら出て行けばいいんですから。
でも私、なんか、すごく腹が立っちゃって。キャンセル料を払うのも、癪だったし、その時初めて調べたら、近辺のマンスリーもホテルもすごく高くて、びっくりしたし。
だから絶対に逃げない、って腹を括りました。
そしたらあの女、昼も出てくるようになったんです。そうです、やっぱり窓のところに立ってるんです。
――服装、ですか?
よく……覚えてないです。なんでだろう、毎日そこに居るのに……。あ、いえ、黒っぽかった……? 気がします。なんだか全体的に黒くて。顔はわかりません。見たくもないから、見ていません。
だってあの女、笑うんですよ。
ただ立ってるだけじゃなくて、笑うんです。
こちらを見て、笑っているんです。わかります。最初に見ちゃったから、笑っている顔を。それからもずっと、あの女はひふ、ひふ、と息を吐くように引きつった笑い声をあげているんです。
夜になると、すごく静かな場所なんです。
物音ひとつしないんです。
そんな部屋で、ひふ、ひふ、ひふ、って気持ち悪い息遣いだけが聞こえるんです。あれは、あの女が笑ってる音なんです。
邪魔で邪魔で、しょうがないんです。
あの、ここ、怖い話に詳しい人が集まる場所、なんですよね? この前エックスでバズってたの、見たんですけど……除霊方法とか、知りませんか?
簡単なやつでいいんです。お塩とかお酒とか、そういう身近なものを使った方法がいいです……ネットとかで、除霊の料金をみたんですけど、やっぱり高くて……詐欺とかだったら、怖いし、自分でやる方が間違いないと思うから……。
いいえ、あの、違うんです。霊能者を紹介してほしいわけじゃないんです。自分でやりたいんです。
霊を召喚する方法とか、そういうの、オカルト好きな人はみんな知ってますよね……?
じゃあ、幽霊を消す方法も、知ってるんじゃないですか?
簡単な方法でいいんです。
あの女が、邪魔なんです。
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