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【6】真夜中はオバケの時間-01
來摩宵央は夜が怖かった。
けれど近頃は、少しだけ待ち遠しい。
友人たちと、そして浬が居るからだ。
世界が明度をゆっくりと下げ始める時間、宵央はいつも憂鬱だった。これから夜――異形のものたちの時間が始まる。
昼間でも宵央の目は明確に異物を視た。部屋の隅に、交差点の真ん中に、ビルの屋上に、誰かの肩の上に、足の下に、そして人々の顔の上に。宵央は普通の人間には見えるはずのないものを視た。
昼でも多い視界の異常は、真夜中へ向けて特に多く、増えていく。
今でも勿論、幽霊は怖い。心霊スポットなど近づきたくもないし、怪談が得意だとは言えない。
それでも《八ツ辻》の常連が語る話は何故か妙に魅力的で、怖いと思いながらも固唾をのんで聞き入ってしまう。一人が語り終えると、癸やペスト医師など考察好きが自分の解釈を語り始める。
もしかして最初から誰も居なかったのではないか――。
もしかしてこの人物はすべてを知っていたのではないか――。
もしかしてこれは嘘ではなく真実なのではないか――。
そんな風に新たな解釈や可能性を付け加えることで、更に怪談は不気味さを増す。そして最後は大抵『とはいえ、結局わからない』と締められる。
すっきりとしないこの後味が、非常に怖い。わからないものって怖いよねぇと酒を啜る猫屋敷に、何度共感したかわからない。
それでも彼らが喜々として語る怪談は、怖いながらも宵央はとても好きだった。
本当に怖い時は、ちらりと端に座る浬を見る。
すると『怖いなら一緒に寝てやろうか?』といつも通りにへらりと笑う。彼が笑うと、宵央はとても安心する。
來摩宵央は夜が怖かった。真夜中が怖かった。昼間の燦々と照り付ける太陽の明りは今も若干怖いが、その下で行きかう人間の群れは少しばかり無視できるようになった。九がよく、『マヨちは周り気にしすぎだわ、みんなすれ違った他人のことなんか二分で忘れるから』と言ってくれるから。
腹の中と言葉がちぐはぐな人間は癸も怖いと言っていた。そうか、自分だけではないのかと、少しほっとした。
日が暮れると怪異が溢れる。
けれど宵央が好きな友人たちが、その怪異を肴にあれやこれやと盛り上がる。その時間が待ち遠しくてたまらない。
來摩宵央は愛すべき日常を手に入れた。
その日常を守る為に、ほんの少し勇気をだしたことまでは覚えている。
うっすらと目をあけたとき、宵央は拘束され暗闇の中に転がされていた。
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