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2 密やかな恋(3)

 再び深いキスを交わしながら、ベッドへともつれこんだ。  ガナーとの情事のために用意したキングサイズのベッドだ。今度はエドアルドが責める番だった。  ガナーは感じやすい。  性感帯である首筋を執拗に(さいな)むだけで、胸の突起が固くなる。そこに舌を擦りつけ、転がし、時に乳暈ごと唇で吸いこむと、細身の姿態はビクンビクンと跳ねながら悶える。その反応が可愛くてしつこく快楽を与えたくなる。 「あ、あ、……はゥ、ゥっ」  色気のある喘ぎだけでまた勃起してくる。  腰と股を交互に愛撫しながら腋を丹念に呵責すると、身悶えしてすすり啼く。人になつくのを忘れた野獣がようやくおとなしくなる瞬間だった。  ペニスに視線を送れば、腹につきそうなほど威きり鈴口から糸を引いている。今まさに落ちようとしているそれを人差し指で掬いとって、彼の口へと差し込んだ。 「んっ…!」  さっきまで生意気だった口は甘えたような声をたてて、エドアルドの指に舌を絡める。  片手でカリをまさぐり、滴り液で濡らした。  滑りが良くなったところで、輪にした指でしたたかに扱く。張り出しが硬度をあげたので、さらにスピードを増した。 「ん、そこっ…気持ち、い、――――!」  たまらないとばかりにシーツを掴み、ガクガクと腰を揺らす。 「は、あ! ね、あんたのでイかして。あんたの、ブっ込まれながらブっぱなしたい…!」 「その言葉遣い、なんとかしろ」  米国独特の下品なスラングに苦笑が漏れた。そんなざっくばらんなところも可愛くてしかたがないが。  他の人間とならば、男女問わずローションを使って相手の負担を減らし、コンドームで己を包んでセーフティセックスを重視するところだ。けれども相手がガナーとなると様相が異なる。  彼はエドアルドがコンドームを着けるのも、自分のアナルに潤滑材を用いられるのも嫌がった。「生の」「直接な」交わりにこだわった。せめてと思ってエドアルドがアナルを舌で濡らそうとしても拒否をする。  ガナーは痛みを耐えれば耐えた分だけ愛の証明になると思い込んでいるふしがあった。それはイタリア屈指の元貴族の当主から情人として択ばれた者としての、一つの矜持のようにも感じられた。  ガナー手ずから尻の下にクッションを差し入れて仰向けになり、膝を抱える。  脚を大股に開いて窄んだ穴を見せながら、「早く入れて」と懇願する。彼自身のいきりたつペニスの向こうから、その美貌が羞恥をかなぐり捨てて焦燥に気色ばんでいるのを目の当りにすると、エドアルドは情欲を抑えられなくなる。同時に、そのひたむきさへの愛しさが込みあげきて胸が痛くなるのだ。  だから、ペニスの挿入は彼にとって激痛に違いなかった。挿入時に漏れ出る呻きはいつも悲鳴に近い。  エドアルドもまた、乾いた場所に押し入るのには忍耐が()った。カリ首を入れるまでも一苦労で、ガナーは顔を歪めて悲痛な呻き声を出し続ける。  だから始めのうちはゆるやかにピストンをしてやる。それでも苦痛にわなないているガナーは可哀想だった。 「つらいんだろう」  そうに決まっているのに、つい訊いてしまう。 「いいんだ……これが、いいんだよ…! ――体が、あんたを忘れられなくなるから。あんたを、体で記憶していられるから…。オレの中に、刻印して…もっと…ねえ、もっと――!」  たえだえの息で返す。  苦痛の中で健気な微笑を浮かべる彼を見て確信する。  彼が最後だろう。  彼以上に愛せる人間などもう現れない。  ピストンを続けると、やがてガナーの腸壁から出る分泌液と血とで、抽挿が楽になる。ガナーも快楽の波にゆっくりと乗るように、再びペニスがもちあがってくる。それをエドアルドは優しく掌で包み、慰撫するのだ。 「あ。あ――。いい。そこっ…ハアッ――――」  内側の性感帯をペニスで擦ると、ひくひくと顎があがって、全身を震わせる。  秒を追って射精感が沸きたったエドアルドはピストンの速度をあげた。繋がりからの卑猥な音と皮膚の叩きあう音が隠微に響く。 「ダメっ、あっ…オレ、い、いく…」  ガナーが迸る。エドアルドも彼の中で果てた。  ガナーは出血し、エドアルドもガナーの引っかき傷でシーツを汚した。  男同士の激しいセックスだ。  体に傷を付けあって、それでようやく充たされる絆。  空腹になればデリバリーとビールとワインで腹を満たした。睡魔に襲われれば眠る。目が覚めて欲すれば時間が許すまで何度でも愛しあう。  シャワーを浴びながらも繋ぎあった。  ガナーのアナルはすっかり爛れて、エドアルドの赤黒くなったペニスが抜かれる度に鮮血を吹き出した。  野獣のように過ごす時間だった。  長かった別離の時間を埋めあわせたくて、必死で愛しあう。そのための別宅だ。 

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