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報告会の夜<ギルフォード視点>(1/2)
***
指定された時刻に、指定された建物に向かうと、そこには私と同じ視察の任を受けた二人と、城への連絡役が二人待っていた。
「待たせたか、すまない」
私の声に、二人は首を振る。
「いや、時間通りだ」
そう答えたのは体格の良い焦茶髪の男で、私の上司でもあるアーヴァンだ。
「ギルフォードさんが最後なのは珍しいですけどね」
そう言って笑ったのは燻んだ銀髪で細身の文官、ヨヒトだった。
視察隊の隊長であるアーヴァンは警備兵舎の厨房に料理人として潜入しており、ヨヒトは事務員として警備隊に潜入して書類に不備や不審な点がないかを探っていた。
できれば私も警備兵として潜り込みたいところだったのだが、私は家柄もあって夜会や舞踏会で人目に触れることも多かったために、顔を隠して町中での情報収集担当となった。
報告会を始めると、書類を探っていたヨヒトがげんなりした顔で言う。
「どうやら本当にここの警備兵達は勤務態度が悪い程度なんですよね……、横領だとか着服だとかそういう痕跡は見当たりませんでした」
厨房に潜入していたアーヴァンも、渋い顔で告げる。
「町中で怒鳴り散らしたり若い子の体に触ったり、幼い子を足蹴にしたり、屋台の物をダメにしたりと中々に酷い暴れぶりではあるようだが、これでは上に報告したところでしばらくの謹慎や減給程度だろうな」
そんな中では、実際の暴言をメモできた私はまだマシな方だったようだ。
私の報告を城の連絡官が書き記している横で、アーヴァンが「ああ」と何かを思い出したように頷いた。
「確かにその男は、その日の夜に警備隊舎に来てたな。長くて綺麗な黒髪だったから俺も覚えている」
「それってもしかして『警備隊長の愛人』って言われてる人ですか? 僕も噂は聞きました。すごく綺麗な少年なんですって?」
「俺は顔は見てないが、隊長のお気に入りらしいな。『少年』ならそんだけで警備隊長をしょっぴけたんだけどな、残念ながら成人男性らしいぞ。外見だけは少年のようだって話だがな」
「なーんだ、成人なんですね。それじゃあ合法ですね。その愛人さんも自分の足で歩いてきたんですよね?」
「そーなんだよな……。あとは……警備隊長は緊縛が趣味だとか、そんな話も聞いたけどな、流石に性癖を理由には捕まえらんねぇからなぁ。何かコトを起こしてもらわんことにはな……」
「そうですよねぇ……」
「ただ、ギルフォードの報告通りなら、その彼が無理矢理相手をさせられたって可能性もなくはないな。例えば、子ども達の身代わりになったとかな?」
「うーん。でもそれは、今の話だけじゃ分かりませんねぇ……」
「そもそも、その男が無事かどうかだよなぁ。俺も仕込みが終わったら厨房からも隊舎からも閉め出される身だが、俺が帰る頃はまだ最中っぽかったからな……。既に何時間も経ってただろあれは……。あんな細い体で耐えられるのかと、つい心配になったんだよな」
「うわ……、アーヴァンさん聞いてたんですか?」
「んな言い方すんなって。厨房の地下倉庫に食材の残りを入れに行ったらたまたま聞こえたんだよっ」
「ええー、言い訳がましくないですかー?」
「んん? そもそも、部屋の前じゃなく地下倉庫から声が聞こえたって事は、あの隊長はわざわざ隊舎までやってきた愛人と、部屋じゃなく地下でヤってたって事か? なんかどうも怪しいよなぁ……。次機会があれば、俺、バレるの覚悟で見に行くか? 他につつけそうなとこも見つからないんだよな……」
「それって、ただの覗きじゃないですか……」
二人の話を聞いて、私は目の前が真っ赤に染まっていた。
まさか、彼があの後そんな目に遭っていたなんて……。
私はあの場にいたというのに。
もう少し彼らに近づいて、彼らの会話をしっかり聞き取っておけば……。
にこやかに会話をして別れたように見えただなんて。
私は……私は一体、何を見ていたんだ!!
「ん? ギルフォード、どうした?」
「ギルフォードさん?」
すっかり俯いて両拳を握りしめていた私は、不意に下から覗き込まれて、肩を揺らした。
「どうかしたんですか?」
「……あ、ああ、いや……」
尋ねられて、私はゼスに接触したことを二人に話した。
……流石に情事については伏せたが。
市場では隊長と仲が良さそうに見えたので、警備兵に関わることは尋ねなかったことを話すと、まずはその時ゼスが庇ったように見えた子ども達について調べてはどうかと助言された。
ゼスに子ども達を庇う理由があるなら、ゼスは警備隊長の味方ではない可能性が高い、という話だ。
なるほど。
さらにはうまくゼスをこちらの味方につければ警備隊長を捕まえる口実にもなるだろうという事で、次の報告会は三日後に、主に私の報告を期待するという形で今日の報告会は終了した。
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