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報告会の夜<ギルフォード視点>(2/2)
宿に戻ってベッドに突っ伏すと、さっきの二人の会話が蘇る。
ゼスは……あの美しい彼は、あの晩警備隊舎の地下で、どんな目に遭ったというのか……。
瞼を閉じると、私の眼裏には私の手で乱れて喘ぐ美しいゼスの姿がはっきりと蘇る。
彼の肌は私の手に吸い付くように滑らかで、撫でれば撫でるほど、より一層触れていたい気分にさせられた。
私にも女性を抱いた経験ならある。
まだ騎士団にいた頃、先輩騎士達に連れられて、そういった店にも何度か足を運んだ。
それなりに快感を感じてそれなりに発散して、ああなるほどこういうものか、と思った。
だが、一昨夜触れたゼスの体はまるで違った。
月の光にほの白く浮かび上がる白い肌は、私が触れるほどに色づいて、何とも言い表せない柔らかな匂いを漂わせた。
女性達よりずっと低い彼の声が、私の与える刺激に応えるようにして零れ、ほんの時々裏返る、それがたまらなく私を煽った。
彼の内側は温かく、私を柔らかく包みながらも強く締め付けて、それはこれまでに感じたこともないほどの心地良さだった。
ずっとこのまま彼の内に包まれていたい。
まさか自分が男を抱いて、そんな風に思ってしまうだなんて、思ってもいなかった……。
セレスティアが私の前から姿を消してからというもの、私は彼女のことばかり考えながら生きてきた。
婚約の打診が山ほど届いても、両親にせっつかれても、どうしても結婚話に踏み出せないほどに、私の心の内はセレスティアでいっぱいだった。
あの日、私が怪我をしなければ。
あの時、私の骨が折れなければ。
彼女はあんなに幼い歳で、一人きり、屋敷から叩き出されなくて良かったはずなのに。
私がベッドから出られるようになった時には、屋敷に彼女の痕跡はどこにもなかった。
彼女を助けようとした私の行動が、彼女を追い詰めた。
彼女は今どこで何をしているのか、そればかりが四六時中私の頭を埋め尽くした。
私に屋敷での居場所をくれた人だったのに。
大切な……大切なたった一人の人だったのに。
私が、彼女から、屋敷での居場所を奪ってしまった。
あれから十六年……。
どれほど探しても、セレスティアの足取りは辿れなかった。
私があの時もっと強ければ……、そんな思いだけでここまで体を鍛え続けていた。
そんな私の、ずっとずっと一人で抱え続けていたセレスティアへの懺悔を、彼は代わりに受け入れてくれた。
彼は私の歪な後悔をそのまま受け止めて、生きていればどうしようもない事もある、と私の心をただ認めてくれた。
そして、私に、夢を見せてくれると言って……体を預けてくれた……。
それが金のための行為だとしても、私はあの晩、確かに彼に心を救われた。
私よりも年下だろうに、ああ、そうか、警備隊長のお気に入りは二十五歳だと町で聞いたな。
彼は二十五歳だったのか……。
セレスティアがもし生きているならば、ちょうど同じ歳だ……。
私より三つ年下の彼は「しょうがないな」というような顔で苦笑して、私を慰めてくれた。
ああ、そうだ。
セレスティアも、あんな顔をよくしていた。
彼はやはり、セレスティアに良く似ている……。
きっと、その心が……。
ひとりで生きていけるほどに強く逞しいのに、それでも温かく優しい慈愛の心で人に寄り添ってくれる。
そんなところが、二人はよく似ているのだ。
今度は私が、彼の力になりたい。
何も言わずに私の背を撫でてくれた、彼のあの、温かな手に報いたい。
彼がもし、仲間達が言うように警備隊長に弱みを握られていたり、脅されているようなら……。
今度こそ、私が、彼の助けとなりたい……。
明日は朝から、市場で聞き込みをしよう。
あの子ども達がどこに住むどんな子達なのか、そこから辿ろう。
そこまでを決めて、私は靴を脱いで布団に潜り込む。
仰向けになると、月の光が細く部屋に差し込んでいるのに気づく。
ああ、月の光を浴びた彼の肌は、透き通るような美しさだったな……。
……彼は今頃、どこで何をしているだろうか。
こんな事ならば、今夜は会えないなんて言わなければ良かった。
そうしたら、彼は今夜もあの酒場に来てくれたかもしれないのに。
……明日の夜には会えるだろうか。
あの酒場で、明日の夜は、彼を待つ事ができる。
……どうか、彼が明日、あの酒場に来てくれますように……。
そして、私を……あの落ち着いた声で「ギル」と呼んでくれますように……。
私は「しょうがないな」という顔で苦笑してくれる、温かくて優しい彼の姿を胸に描きながら、深い眠りについた。
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