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初めて理解した恋心*
「ゼス……」
ギルの上擦った声が、何だかすごく嬉しい。
ああそうか、好きな奴に抱きたいと思ってもらえんのって、嬉しい事なんだな。
俺は俯く角度をキープしながら、上目遣いにギルを見つめた。
「なぁ、ギル……早く……」
早く、俺を屋敷に連れ帰るのは諦めるって言って、俺に触れてくれよ。
俺は確かにギルに弱いが、ギルはめっぽう俺に弱い。
こーゆー手を使えば、この男に呑みたくない要求を呑ませんのもそう難しくないってのは、こないだ俺が隊長に連れて行かれる作戦を強引に呑ませた時にもう分かっていた。
「っ、こんなのは、卑怯だ……っ」
ギルはそう言いながらも、俺に誘われるままにベッドへと近づいてくる。
「私は、ゼスを……、ゼスの立場を、正当に……」
ギルの両横で、大きな両拳が悔しげに握り込まれている。
「そんなんいらねーんだって。俺はこのままで……――」
そこまで言ってから気づく。
もうきっと、それでは足りない。
俺は、ギルが好きだと気づいてしまったから。
「いや、……できたら年に何度かでいいから、ギルが……俺を抱きに来てくれたら、嬉しいん――っ!?」
突然ガバッと覆い被さってきたギルに、ぎゅうぎゅうに抱き込まれて言葉が途切れた。
「そんな……っ、そんなことを言われて、私が、どんな……っ!」
「……おい、俺に触ったって事は、俺を屋敷に連れ帰るのは諦めたんだな?」
ギルは蜂蜜色の瞳を半分にして恨みがましく俺を見た。
「……ゼスは、狡い……」
「なんとでも言え、正々堂々じゃ俺は今頃生きちゃいねーんだよ」
俺の言葉にギルは苦しげな顔をする。
……そんな顔をさせてーわけじゃねーんだけどさ……。
俺は罪悪感を抱きつつも、ギルの頬に顔を擦り寄せミルクティー色の髪を撫でながら、優しい声で囁く。
「……ほら、ギル。俺を屋敷に連れ帰るのは諦めたって言えよ……」
ギルは喉の奥でぐぅっと息を詰める。
「そしたら俺を好きなだけ抱いていいから、な……?」
ギルの噛み締めた奥歯がギリリと鳴るのがすぐ耳元で聞こえた。
俺はそのままゆっくり優しくギルの頭を撫で続ける。
すると、ギルは少しずつ、じわじわと脱力した。
俺に覆い被さるギルの重みがほんの少し増す。
それでも、この男の体重を考えれば些細な重みだ。
はぁぁぁぁぁぁぁとギルは長く息を吐き切って、それから力なく口を開いた。
「……分かった……ゼスを屋敷に連れ帰るのは諦める……。だが、私はゼスの隣を諦めたりはしない。どうか、お願いだ……、もう私の前から急に居なくならないと、約束してくれ……」
「んー……それは難しいな。俺にその気がなくても、いきなり殺されるような事もあんだろーしな」
俺の言葉にギルはくしゃっと顔を顰める。
「それなら……」と言いかけた言葉をギルは苦い顔で呑み込んだ。
ああ、ギルは俺を縛らないでいたいと思ってくれてんだな。
そんなギルの様子に、俺は胸を温められる。
ギルは『その代わりに』とは言わなかった。
ただ俺に願った。
その優しさに、俺もなるべく応えたいと思う。
「俺も、お前と会えなくなんのは勘弁だよ……」
そう言って俺が苦笑を浮かべると、ギルは切なそうに眉を寄せて、俺の唇に優しく触れるだけのキスをした。
鼻が触れ合うくらいの距離で、ギルは俺の言葉の続きを待つ。
……んだよ、まだ言えってのかよ。
「……俺も……たまには、ギルの隣にいれたら……」
違う。
たまにじゃない。
本当はずっとこいつのそばにいたい。
本当は、俺だって……離れたくなんかない。
けどギルには、あの屋敷で結婚して子を成して……当主としてやんなきゃいけねーことがたくさんあんだろ?
俺より三つ上のギルはもう二十八歳のはずだ。
とっくに婚約……いや、結婚してたって……。
むしろ、既に奥さんどころか子どもだって……いたって、おかしくねー歳だろ……。
チビ達とワイワイやれたのは、もしかしたら、同じくらいの歳の子を持つ親だから……かも……。
そんな風に考え始めたら、ほんのたまに抱かれることすら許されない事のような気がしてくる。
けれど、それを尋ねる勇気は、どう絞り出そうとしても出てこない。
「……ぁ……、ギル……」
どうしようもなく全身を襲う不安から逃れるように、俺の口はギルの名を呼んでいた。
「ゼス……、そんな顔でそんな声を出されたら、本当に片時も貴方を放したくなくなってしまうだろう? まったく、貴方はどこまでが演技で、どこからが本心なんだ……?」
困った顔でそう言うギルの瞳は劣情で色を濃くしていて、俺の脚にはギルのゴリッとしたものがぐりぐりと押し付けられている。
ギルも、早く俺に入れたいって、思ってくれてんだ……。
俺の内側が、まるで早く入れて欲しいみたいに甘く疼く。
ギルは「今日の準備は私にさせてほしい」と囁いて、俺を軽々と抱き上げると衝立の向こうに連れて行った。
そこには扉があって小さな浴室とトイレまでが備わっている。
すげーな、まるでどっかの貴族の屋敷…………!?
慌ててギルを見上げた俺に、ギルはクスッと笑って「大丈夫だ、ゼスを町から出してはいないよ」と答えた。
ギンギンに立ち上がった股間とギラギラした瞳で、それでもギルは俺の準備を手早く丁寧に済ませた。
むしろ俺の方が、ギルにナカを洗われる度に声を堪えるのが一苦労だった。
***
俺を囲い込むように、二本の太い腕が俺の頭の横を埋めている。
その上で、ずっしりと重たいギルの身体が覆い被さってくると、まるでギルの腕の中に永遠に閉じ込められてしまうようだ。
俺はもう、ギルから逃げられない、そんな予感に肌が薄く粟立った。
「ゼス……愛している……」
ギルは俺の全てを食い尽くすように、俺の身体を隅々まで暴いていった。
「ん……、ぁ、ギル……」
「もっと呼んでくれ、私を、貴方の声で」
「ギル、んっ、ギルっ、そこはっ、や、ぁ……っ」
「ここかい?」
「ぁあああっ!?」
ぐいと同じ場所を突き上げられて、俺の身体が勝手に跳ねる。
ギルは既に一度俺のナカに出していて、ギルのモノが俺のナカで動く度、ぐちゅぐちゅと泡立つような水音が部屋に響いていた。
「ぅ、ギル、だめ、だ……っ、ギル……っ、んんっ」
「どうしてだ? 良さそうに、見えるが……」
俺を優しくも力強く揺らし続けるギルも、少し息が上がっていて、その低く甘い声はますます色気を増している。
「だっ、て、良過ぎる、から、お、俺……っ、おかしく、なる、ぅ、ギル、ぅあ、ぁあっ」
ギルは話を聞きながらも、俺をまるであやすかのようにゆるゆると優しく揺らし続ける。
「なんて可愛いんだ……、ゼス、ゼス……」
ギルは、ちゃんと俺の感じ過ぎるところばかりを突かないように、気遣って動いてくれた。
ああ、ギルは優しい。
こんな最中でも、俺が嫌がる事はしないでくれる。
たとえそれが痛みじゃなくても、ギルは俺に無理強いしない……。
俺は心から安らげるギルの腕の中で、ギルを身体中で感じていた。
きっと、どんなに俺が見苦しく喘いでも、ギルは引いたりしない。
俺の準備ですら嬉々としてやってくれる、そんなギルなら……。
「んっ、ぁあっ、イイっ、ギル、ん、はぁっ、それ、きもち、ぃ……は、ぁ、ギル、もっと……ほしぃ……」
「私の持てるものなら、いくらでも、ゼスに、捧げるよ……」
「んんんっ、ぁあ、ギル……、っイイ……、ぁ……、イク……また、おれ、イッちゃ、う、ぁ、ぁあ、ぁあああんんんっ」
俺の内側がぎゅうぎゅうとギルに抱きつく。
ギルはそんな俺のナカを慰めるように優しく擦り上げる。
「ああゼス……、何度でも、私を抱き締めておくれ……」
「ふ、ぅ、あっ、あ……、止まら、止まらないっ、イクの、ずっと……っ、ギル、ギルぅっ」
パチパチと火花の散るような、頭ん中に鋭く刺さる快感に、全身がビクビクと跳ねまくる。
「ゼス、ゼス……っ、好きだ、愛してる、もう、どこへも行かないでくれ……」
声も出せないほどの快感に、息が詰まって、吸えなくなる。
俺のナカでギルのモノが俺の内側をさらに広げるようにミチミチと怒張した。
ああ、ギルがまた、俺で感じて、俺のナカに出そうとしてる……。
それを嬉しいと思った途端、俺の身体が勝手にギルを求めてナカを絞った。
「っっっ――っ、んんんっ」
快感がとめどなく溢れて俺の全身を侵す。
息は苦しいままなのに、心臓だけがバクバクと早まる。
苦しいのに、死ぬほど気持ちよくて、快感しか追えなくなる。
「ゼス、ゼス……、私の愛しいゼス……お願いだ、私のそばを離れないでくれ……っ」
懇願するような声色とは裏腹に、ギルが俺の腰をグイと引き寄せて力強く奥を貫く。
勢いよく注がれ始めたギルの熱に、俺は奥の奥まで侵される。
「っ、っ……っ、――っっっ!!!」
あまりの熱さに腹から全身が溶けていってしまいそうだ。
俺がギルとだけこんなにも感じてしまうのは、俺がギルを好きで、ギルも俺が好きだから、なのか……。
「私が必ず、ゼスを守る。だから……」
ギルの言葉を終わりまで聞き取れないままに、俺は幸せな気分で、意識を手放していた。
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