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第2話 実家へ

名のある貴族たちで、私のような傷物を欲しがる奇特な者はいない。 だが、Ωとして生まれたからか、はたまた美麗な両親から生まれたためか、私の見目は一般的に言って優れているらしく、何件か釣書は届いているらしい。 どれも、両親くらい年の離れた貴族か、子爵や男爵といった格下の貴族。 母に言わせると「ユーフォルビアが勿体ない!!」相手らしい。 私からしたら、婚約破棄をされてしまうような不出来な息子を追い出さずに真剣に嫁ぎ先を探してくれる両親がいるだけでだいぶ幸せなことだ。 数日が立ち、居ても立っても居られなくなった私は、少しずつ家の仕事を手伝い始めた。 父からは「できるだけ良い嫁ぎ先を探すが、もしかしたら独り身で次期当主()を支えてもらうことになるかもしれない。覚悟するように」と言われた。 「家に置いてもらえるだけ幸せです」とは返したけれど、独り身のΩがどれだけ短命かは、Ωと判明してから耳にタコができるほど聞かされてきた。 ヒートと呼ばれる発情期は、体にかかる負担が大きい。 本来なら、番やパートナーのαに治めてもらうが、それがいない者は薬に頼るしかない。 ただでさえ負担が大きいのに、それを無理矢理薬で抑えるのだから、命を削らないわけがない。 王太子と婚約している自分には無縁の話だと思っていた。 恐ろし…、くもない。 人生でやるべきことを失った今、私は自分がどれほど早死にしても惜しくはない。 それでも、家の仕事だけをして生きていくわけにはいかず、招待状が届いた夜会に参加することになった。 全く以ってやる気のない私を見かねた母上が、仕立て屋にあれやこれやと口出しをしてくれて、美しい衣装が出来上がった。 透けるような白髪に、薄い桃色の瞳を持つ私に、その限りなく白に近い紫の生地にオーロラの様に輝くビジューを散りばめた衣装は良く似合った。 今までは婚約者としてロイヤルブルー(王家の色)に金糸の衣装しか着られなかった私にはとても新鮮に見えた。 王太子が”長い方が好き”だと言ったから、伸ばし続けていた髪をまとめて(うなじ)を晒す。 本来、未婚のΩが項を晒すことはあまり良しとはされていないが、いい加減、長い髪の毛が鬱陶しかった。 別に望んでる相手もいないのだから、夜会が終わったらいっそ切ってしまおうか。 年の近い弟(次男)は、婚約者のご令嬢をエスコートするのだと、1人で馬車に乗って行ってしまったので、私は1人寂しく馬車に乗る。 末っ子の三男がお見送りに来てくれる。 「ユーフォお兄様、とっても綺麗。 こんなに美人なお兄様と婚約破棄するなんて、王太子様は愚かです」 まだ10歳にも満たない彼が、殊勝な態度で王太子を批判するのに少し笑ってしまう。 「こら。気持ちは嬉しいですけれど、次期陛下にそんなことを言ってはいけません。 可愛い貴方の首が飛んでしまいます」 「はい…、気を付けます」 兄想いが過ぎて、貴族らしからぬ言葉使いをしてしまうけれど基本的には聞き分けの良い素直な良い子なのだ。 末っ子のリーリアはαで既に婚約者はいるが、夜会には参加できない年齢の為、お留守番だ。 「良い子にしているんだよ」と頭を撫でると 「寂しいので早く帰ってきてくださいね、ユーフォお兄様」と微笑む。 あまりに天使すぎて夜会に行くのがさらに億劫になったが、従者が「ユーフォルビア様、そろそろ…」と言うので小さく溜息を吐いて馬車に乗り込む。 王太子の婚約者だったころは、形だけでも馬車に乗る際はエスコートしてくれてたな…、と胸がちくりとした。

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