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第3話 いざ、夜会へ

ほとんどが出会いや婚約者を見せびらかす目的で比較的若い貴族達が集うこの夜会は、贅を尽くした煌びやかな会場で執り行われる。 誰もが自慢の一着を着こみ、髪や顔をこれでもかと盛り立てている。 私が通るたびに湧くひそひそ声と不遜な視線。 早くも来たことを後悔する。 そりゃあの大きな高等学校の卒業パーティで婚約破棄をされたのだ。 ここにいる全員が私のことを知っているだろう。 王太子も…、いや、彼の方が悪い意味で噂されているらしいが、ダリア嬢と腕を組み、楽しそうに会場を闊歩しているのでまったく気にしていないようだ。 なんで、私ばかり… そんな気持ちでくさくさとしながら、ワイングラスを受け取り、誰も声をかけるなというオーラを出して壁際に立つ。 初めはざわざわしていた周りも、私が動かず喋らずで突っ立っていると、慣れたのか静かになった。 そうそう、私の事は空気だと思っててくださいと心の中で呟く。 「こんばんは。麗しいプリンセス」 歯の浮くようなセリフが聞こえ、私はワイングラスから顔を上げる。 そこには、見知った顔があった。 「クロード様…、お久しぶりです」 「うん」と笑顔で頷く彼は、現陛下の兄の子息。 王太子から見ると従兄に当たる人だ。 本来、陛下になる予定だった王兄は、家督を継ぐのが嫌で、まだ小さな息子のクロード様と奥様を残して放浪に出た。 勿論、彼の王位継承権は剥奪され、無事、今の陛下が家督を継いだ。 奥様もすぐに王宮から逃げ出したため、クロード様1人が残された。 可哀想な話である。 当の本人は、まあまあちゃんと教育も受けたし、冷遇されたわけでもないから、むしろ放浪に連れてかれて危険な目に合うよりましだと笑い飛ばしているけれど。 「ご一緒しても?」と問われ、断る理由もないし、むしろ変に自分狙いの人に声を掛けられるよりましなので「ええ、どうぞ」と言ってグラスを合わせた。 少しだけワインを口に含む。 普段からあまり飲まないし、あまり酒には強くないので気を付けながら飲まないと… そんな風に考えていると、クロード様が声をかけてくる。 「ユーフォルビア様は今日もお美しい。 むしろ、さらに美しくなったように見える。 貴殿は、濃い色よりも淡い色が似あう」 今までは、王太子の婚約者として褒められていた。 が、1人の人間として他人に褒められることは久々で、表情を保つことを意識しながら「ありがとうございます」と答えるのに精いっぱいだ。 「クロード様も、よくお似合いで」 ヨーゼフ王太子は、金髪碧眼に痩身とTHE王族という風貌だけれど、クロード様はオリーブブラウンの髪にエメラルドのような鮮やかな緑の目をしている。 体躯も、王族の座学よりも騎士のような鍛錬を積んでいるからか、王族らしからぬ屈強でやや褐色の肌をしていた。 だから、高貴な王族の色(ロイヤルブルー)よりも、今着ているシンプルな深緑のタキシードが良く似合っている。 「ありがとう」 そう言ってほほ笑むクロード様に、顔が熱くなる。 クロード様もヨーゼフ王太子同様にαだけれど、見た目も匂いも圧倒的にクロード様が好みだったので、こういう風に笑いかけられるとどうしても浮かれてしまう。 今の私はフリーだから誰とどうなろうが問題はないけれど、二度と王家には関わりたくなかったので、クロード様とどうこうしたくはない。 それに、クロード様も、王族だし見た目も良いし非常にモテるから、私のような傷物と…、なんて考えているわけがない。 落ち着けと自分に言い聞かせていると、音楽の演奏が始まる。

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