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第8話 王家からの提案

クロード様と市井での逢瀬を始めてから、早半年。 そろそろ、お返事をしなくてはならないと焦っていたころ、王家から手紙が届いた。 クロード様からではなく、陛下から直々の命だ。 中身を確認すると、陛下と皇后と3人で話し合いの場を設けさせてほしいとのことだ。 つまり、王宮に出向け、と。 両親へ相談はしたけれど、陛下からの直々の呼び出しとなれば断るわけにはいかないようで…、私は2度と踏みたくないと思った王宮の地を踏むこととなった。 陛下と皇后と顔を合わせ、私は膝をついて挨拶をする。 と、彼らは慌てて止めるように言い、「あんなことがあった後で呼び出して…、頭を下げなくてはならないのはこちらの方だ。来てもらえただけでもありがたくて頭が上がらない」と言った。 正直かなり腹が立っていたので少しだけ溜飲が下がった。 「それで…、君を呼び出したのはほかでもない。 我が愚息…、ヨーゼフの婚約者についてだ…」 そう渋い顔をして陛下が切り出す。 話を聞いて要約するに、婚約者のダリアが湯水のごとく王家の金を使いこみ、さらには妃としての勉強をさぼっている…と。 それで、どれほど陛下や皇后から無駄使いやさぼりを止めるように婚約者へ言えと言っても、王太子は聞く耳を持たない。 プライドが高い故、2人の進言を無視しているが、きっと私から『婚約者に戻りたい』と言えばダリア嬢の事は切ってくれるのではないか?と。 きっと、王太子もダリア嬢が王家に相応しくないことは気づいているはず。 プライドゆえに、ダリア嬢を切れずにいるから、ユーフォルビアから『戻りたい』と言えば戻してくれるはずなのだ。 そのようなことを繰り返し説明された。 聞き終わった私には、怒り以外の感情は湧かなかった。 しかし、相手はこの国の陛下。 私は深く深く息を吸って、吐いて…、なんとか怒りを鎮める。 「お言葉ですが…、王太子様は私とよりを戻すつもりはないと思います。 彼はきっと、ダリア様のような華やかな女性がお好きなのでしょう。 しかも、大勢の前で私を振った手前、よりを戻すなんて格好が悪い真似をするとは思えません」 そう言って断ったが、相当切羽詰まっているのかあれこれと”逆求婚”するように進めてくる。 半年前の私なら、プライドなんてどうでも良かったから「別に構いません」と言って、陛下の言うとおりに動いていただろう。 でも…、今の私の頭にはクロード様がいる。 また王太子の婚約者に戻れば…、クロード様と婚約することは勿論、彼と市井に繰り出すことも2人でお茶を飲むことも食事をとることも出来なくなる。 それが嫌だった。 なかなか諦めてくれない陛下に「申し訳ございません。実は、既に婚約を結ぶ相手がおります」と口をついて出てしまった。 「な、なんと…、相手は?」 「クロード様です」 ごめんなさい、クロード様。 求婚されているのいるのは本当だけれども、私はまだ回答をしていない。 心の中で謝りつつも、今の状況を打開するためにお名前を借りてしまった… 「クロードというのは…、儂の甥の?」 「はい。陛下の兄君のご子息です。 婚約破棄となり、すぐに気にかけて頂いて…」 私がそう言うと、陛下は深く溜息を吐いた。 「そうか…、半年もあればユーフォルビア君にだって相手は出来るか。 侯爵家が、甥とは言え王家との婚約を破棄するわけにはいかないからな…、とても残念だが、君にお願いするのはよそう」 こうしてようやく解放された。 もう自分が「よりを戻します」と言うまで帰れないのではないかと絶望していたのでほっと息を吐く。 だが…、クロード様と婚約すると言ってしまった… ど、どうしよう。 ふらふらしながら、裏門に待たせている馬車を目指して歩いていると、「ユーフォルビア!」と私を呼ぶ声がした。

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