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第9話 色々とすっ飛ばしすぎな気が…

驚いて振り返ると、クロード様がいた。 王宮だし、クロード様や王太子様と鉢合わせる可能性を考えなかったわけではない。 が、いざ遭遇すると心臓が変な音を立て始める。 「クロード様、ご機嫌麗しゅうございます」 2人で会うときはもっと気軽に挨拶をするが、ここは王宮で誰に見られているかも分からない。 私は深々と頭を下げた。 「風の噂でユーフォルビアが呼び出されたと聞いたんだ。 それにしても顔色が悪い。 あの2人に何か言われたのか?」 「王太子様と…、もう一度婚約者になれ…、と」 クロード様の剣幕に圧され、思わずそう言っていた。 クロード様が目を見開く。 「一体…、どの面を下げて…」と彼は静かに怒っている。 「それに、ユーフォルビアには今、俺が求婚しているんだ。 横から掻っ攫うような真似、いくら王太子でも許せない」 そう言って怒ってくれたことにホッとしつつも、自分の先ほどの言動がさらに彼を怒らせるのでは?と不安になる。 「あの…、それで、ですね」と歯切れ悪く切り出す。 「クロード様と婚約を結んでいるのでお断りしますと申し上げてしまいました…」 恐る恐る彼を見上げると、驚いた顔をして固まっていた。 信じられないものを見るような顔で私を見ている。 私は慌てて床に手をついて謝った。 「申し訳ございません!!勝手にお名前を出して、ご迷惑をお掛けして…、こんな私と婚約するなんて嫌ですよね!? こ、婚約は撤回して頂いてもかま…」 いわゆる土下座をしていると、不意に抱き上げられた。 「なぜ謝るんだい、ユーフォルビア。 君は陛下にも”クロードと婚約する”と宣言してくれたんだよね? 俺と婚約してくれるんだよね?」 抱き上げられて目線を合わせられる。 怒っているかと思った彼の顔は、輝いていた。 まるで喜んでいるように。 「え、ええと…」 「俺と婚約するというのは嘘だとは言わせないよ。 さあ、早速籍を入れる準備をしよう。忙しくなるな」 私を抱き上げたまま、宮中をずんずんと進む。 連れてこられたところは彼の私室だという。 「さあ、座って」と言われ、椅子に座ると目の前に紙とペンが差し出される。 「まずは届け出を書かないと。 俺の欄は埋めてあるから、あとはユーフォルビアのところを書いて」 届出書の右側を指でさされる。 わが国では、結婚の際に神殿に約束状のようなものを提出する。 その紙を今から書かされるらしい。 「いや、あの、でも…、ちょっと性急すぎませんか? これ、婚約すっとばして結婚の書面ですよね? もう少しよく考えた方が…」 私が目の前に座ってニコニコしているクロード様へそう言うと、彼は顔を曇らせた。 「早く提出しないと、陛下や皇后に嘘を吐いたことになるよ。 俺のことも裏切ることになるよね? そしたら不敬罪に当たると思うんだけど…」 立派な脅しだと思うけれど、色々あってパニックになっていた私は、勧められるまま空欄を埋めてしまった。 すると立ち上がった彼が私の手を引いて立たせ、またずんずんと歩き始める。 大柄な彼とは歩幅があまりに違うけれど、そこは気を使ってくれているようで転ぶようなことはない。 そして王宮の敷地内にある神殿へあっという間に紙を提出してしまった。 驚いて固まる私を抱きしめ、「ユーフォルビアを王太子なんかには会わせたくないから、王宮の敷地外に家を建てよう。それが出来上がった暁には、2人で楽しく暮らそう」と囁いた。 「本当はもっと一緒にいたいけれど、君の体調が心配だから今日はちゃんと家に帰すね」と、ぼんやりしている私をレイネル家の馬車に押し込む。 道中、ずっとぼーっとしていたが、自宅に戻ると現実が一気に押し寄せてきた。 わ、私、今日の今日でクロード様と婚約は愚か結婚までしてしまった!? ど、どうしよう… 私は真っ青な顔のまま両親を呼び出し、事の顛末を伝えた。 両親が頭を抱えたのは言うまでもない。

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