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第11話 衣装作り

家が出来上がる前に一度夜会に行かなくてはならなくなった。 クロード様は大層張り切って、ご自分の衣装だけではなく私の分もオーダーしてくださった。 結婚したのだから揃いにしないと変だ、というのが彼の言い分だ。 確かに王太子の婚約者のときは、ロイヤルブルーの生地で仕立ててもらっていた。 でもそれは、王家の色だからであって…、互いの瞳の色をした何かを装飾したことはない。 普段は深緑や濃紺といった暗い色の衣装を着ていたのに、今回のクロード様は限りなく白に近い空色の生地を選んだ。 確実に私に合わせるために… そんなことしなくていいとは言ったものの頑固で…、しかしいざ着てみるとその色は似合っていた。 暗色の時は男らしく凛々しい印象なのに、白っぽいカラーは褐色の彼を爽やかな王子のような印象にする。 なんだかんだ彼も王族なのだと再認識させられた。 おまけにボタンやビジューに使用する石はシャンパンガーネットというかなり希少な鉱石を使用している。 お世辞をまんま受け取っているようで恥ずかしいけれど、薄い桜色で私の目の色に見えなくもない。 あまりに綺麗なので見入っていると「ユーフォルビアようにもブローチを作るか?」と言われたが、値段が怖すぎて断固拒否させていただいた。 代わりに「緑色のブローチが欲しいです」と言えば、クロード様は嬉々として商人に緑の鉱石を全部見せるように言った。 デマントイドガーネットという鉱石に目が留まる。 深い緑なのに、よく光を反射する…、クロード様の瞳の色によく似ていた。 商人が「お目が高い」と手を擦り合わせた。 これもどうやら、希少な鉱石らしい。 「あ…、でも…」と別のものにしようと思ったけれど、クロード様が「これが俺の色に似ていると言うなら、こんなに嬉しいことはないよ」と微笑むので、恐縮ながらそれを加工してもらうことにした。 シャンパンガーネットほどではないですから、という商人の言葉を信用して。 そうして出来上がった衣装は、今までの私が着てきたものとはまた違った雰囲気だった。 母上がプロデュースするものは、どちらかというと可愛らしい少女趣味のような感じだが、クロード様のは洗練された儚さのあるデザインだ。 これなら、深緑のブローチも浮かないだろう。 私は嬉しくて、衣装を手に持ったまままじまじと眺めた。 頬が緩まないように気を付けながら。 すると、クロード様が不安げに「何か気になる点でもあったか?作り直させようか?」とこちらを覗き込む。 「いえ。直すなんてとんでもないです。 今まで作って頂いた衣装の中で1番好きです…」 そう言ってうっとりしていると、隣から何かが崩れる音がした。 慌ててそちらを見ると、クロード様がうずくまっている。 何事!? 「だ、大丈夫ですか!?」 何か病とか体調が悪くて倒れてしまったのかと思い、駆け寄って背中を摩る。 「い、医者を…」 慌てて周りのメイドや付き人達を見るが、皆、焦るというより生暖かい物でも見るような目で見ていた。 「え、えっと…、あの、医者をっ」 と私が慌てていると、のっそりと彼が起き上がった。 「医者は不要だよ。 ちょっとあまりに可愛かっただけだから」 「は、はぁ」と生返事が出てしまい、失礼に当たるがこれは許してほしい。 確かに衣装は可愛いけれど、倒れるほどですか…? 「あの…、確かに衣装は可愛いですが、当日こうなっても困りますし…、この服当日までクロード様のお部屋に飾って目を慣らしますか?」 そう提案するとクロード様は「いや…、え?」と困惑している。 周りのメイドたちもざわついているし… そんなに変な事言ったかな? 私なんかが着る服をクロード様の部屋に飾るなんて失礼だっただろうか…? 「慣らすなら…、この服を着たユーフォルビアごと飾らなくてはならないからね」と彼は困ったように笑う。 「申し訳ございません。 それは無理なご提案かと…」 私だって、彼に比べれば暇そうに見えるかもしれないが日々やることはある。 「いや、うん。分かってるよ。 それはそうとしてサイズを確認するために着てみたらどうだろう」 私は頷いて衣装に袖を通した。 サイズはぴったりで、見た目はかっちりしているのに素材が軽くて動きやすかった。 「クロード様!ぴったりです! やっぱり直す必要なんてないですよ!」 喜びを伝えるためにクロード様を振り返って言ったが、彼はまた床に(くずお)れていた。 やはり…、部屋にでも飾っておいた方がよいのではないだろうか…

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