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第12話 自分たちの評価
クロード様の結婚して初めての夜会。
初めて彼にエスコートしてもらっているが、王太子様とは比べ物にならないくらい紳士。
いや…、比較するなんて我ながら最低だ。
私は自分の醜いところに蓋をするように完璧な笑顔を貼り付け、クロード様が挨拶する先々で愛想を振りまいた。
”王太子に婚約破棄されつつも王家に取り入った恐ろしいΩ”
私の評価はおおむねそんなところの様。
別に構わない。
可哀想なΩと同情されるよりは、強かなΩだと揶揄された方がマシだ。
中年の伯爵がクロード様へ挨拶に来た。
私は隣でほほ笑む。
「いやぁ…、ユーフォルビア様はさらに美しくなられましたな。
先日の夜会でも美しかったですがな。
吾輩も僭越ながら釣書など送らせて頂きましたが、クロード様がいらっしゃったのなら出る幕はなかったですな」
ガハハと大胆に笑う伯爵。
そういえばこの方の釣書を見かけたような気もする。
「私には勿体ないお言葉です」と微笑むと、伯爵は「実に美しいですなぁ」とさらに褒める。
正直、反応に困る。
利害の一致で結婚したとは言え、夫の前で褒められるのは気まずい。
「伯爵、申し訳ございませんが、挨拶に回らねばなりませんので…、我々はここで」
するとクロード様が助け船を出してくれた。
「ああ、そうか。新婚ですものな」と、伯爵は別の人に挨拶に向かった。
た、助かった…、と安堵していると腰をぐっと引き寄せられた。
驚いて「クロード様?」と名前を呼ぶ。
「君の美しさを世に知らしめたい気持ちはあるが…、口説かれているのを見るのは面白くないな」
目も合わさずにそう言われて悲しくなった。
面白くない…、クロード様を不愉快にさせてしまった。
「申し訳ございません…、気を付けます」
そう謝ると、彼は盛大に溜息を吐く。
あ…、なにか間違えてしまったみたい。
上手く笑顔を張り付けて立ち回れていると思った。
でも、自惚れだったみたい。
彼の隣に私は相応しくないと思われてしまっただろうか。
婚約破棄…、いや、離婚の文字が頭に浮かぶ。
「ごめん。違うんだ。君は悪くない。
心が狭い俺を許してくれ」
顔を上げると、困った顔をしたクロード様と目が合う。
「っ…、すまない。
泣かせてしまった。
泣かないでユーフォルビア」
そう言ってクロード様が頬を撫でる。
気付かないうちに私は泣いてしまったようだった。
「申し訳ございませんっ、違います。
意に反して出てしまったみたいです。
すぐに止めますから」
ハンカチを出し、ぎゅっと目を抑える。
少しラメが取れてしまったけれど、そこまで被害は出ていないだろう。
表情や感情の抑制が出来ないなんて、王家の妻失格だ。
「ユーフォルビア」
名前を呼ばれて顔を上げる。
「愛している」
「は…、え?」
ポカンとした後、じわじわと顔が熱くなる。
え、え??なに???
混乱していると、ざわざわとした周りの音が聞こえた。
私が急に泣き、クロード様が「愛している」と公衆の面前で言い放った。
周りが注目しないわけがない。
そこでふと、彼の言葉は私が泣いてしまったという事象を皆の記憶から飛ばすためのパフォーマンスだったのではないかと思い至った。
さすがクロード様。策士ですね…
私は再び完璧な笑顔を貼り付け、「私もお慕いしております」と聞こえるようにはっきりと言った。
そして「さあ、次は陛下にご挨拶しますよ」と逆にクロード様の背中を押して歩き始めた。
クロード様が機転を利かせなければ夜会で泣き出したヤバイ妻だと思われるところだった。
陛下に挨拶をし、今後の夫婦生活について進言を頂き、そこから仕事の話にシフトしたので私は席を外させてもらった。
クロード様は「着いて行こうか?」と聞いてくださったが、「お花を摘みに」と言うと引いてくれた。
ちょっと1人になりたかったのだ。
ちゃんと表情を作る為に。
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