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第18話 避けられている

自宅につき、抑制剤を飲んでから仕事をしてクロード様の帰りを待つ。 騎士の仕事に専念してから、彼は日中、家を空けている。 帰宅後、夕食を取りながら私が仕事の報告をして、必要ならばそのあとに彼が領地に関する仕事をする。 大変じゃないですか?と訊いたが、「αなので問題ない」とのこと。 つくづく、α性というものが羨ましい。 クロード様が帰られたという報告を受けたので、慌てて玄関へ向かう。 クロード様はコートやら帽子やらを出迎えた従者に脱いで渡しているところだった。 「クロード様、お帰りなさい」 「ユーフォルビア!ただいま。 わざわざ下りてくるなんてどうしたんだい?」 私の部屋は、防犯のためということで玄関から1番遠い二階にある。 だから、日ごろはわざわざ出迎えをしていないし、しなくていいとクロード様に言われていた。 「あ、あのっ」 夕食の時に相談したいことがある、そう言おうと思って一歩近づくと、彼は半身で私を避けるように後ずさった。 まただ… この家に来てから…、正確にはあのお昼寝の後から(?)、彼は私が近づくと避けるようなそぶりをする。 かつては、彼の方から頭を撫でたり近づいたりしていたのに。 私は少ししゅんとして一歩下がると「夕食の時にお話したいことがあるのですが」と伝えた。 「あ、ああ、分かった。 今日のお茶会での話かい?」 「はい。少し…、気になる話をお聞きして… あの、疲れているのにわざわざ来てしまってすみませんでした。 夕食まで自室にいますね」 「え、あ、ああ」 私はそそくさと来た道を戻る。 お出迎えなんて、思い付きでやらなきゃよかったと後悔した。 色んな不安なことがあって、少しでも早く彼の顔を見て安心したかったのだ。 でも、私はクロード様を困らせてしまった。 苦しくて、部屋のドアの前で蹲る。 彼は、私と結婚したことを後悔していないだろうか… 少ししてメイドが呼びに来たので、私も階下に下り、席に座る。 夕食を取りながら、お茶会で聞いた妃と側室の話をした。 クロード様のお顔は険しい。 「全く…、勝手なものだな。 側室の話は初耳だが、ユーフォルビアを妃に戻せと言う連中がいることは知っている。 君が王太子の元へ戻りたくないのならば、俺も決して首を縦には振らないから安心してくれ。 いざとなったら国を捨てて逃げてもいい」 そう真っ直ぐに言われて、嬉しかった。 けれども、私は首を横に振った。 「クロード様が国を捨てる必要はありません。 いざとなったら私一人で逃げます」 「馬鹿を言わないでくれ。 Ω1人でなんて逃げられるわけがないだろう? なんのために結婚したと思っているんだい? 俺たちはもう一心同体なんだから」 貴方をそこまで巻き込めません、そう言いかけたのを(こら)えて「ありがとうございます」とだけ言った。 嘘でも嬉しかった。 そこまで優しくしてくれる人を、私は巻き込めない。 「他には?」 そう問われて「え?」と訊き返した。 「他にも何か困りごとがあるんじゃないか? いつもと少し様子が違う」 ヒートの話もするつもりだったけれど、出迎えで避けられてからは胸に仕舞っておこうと思った。 抑制剤はまだあるから。 「いえ、この話をしたかっただけです。 離婚は断ると言っていただけたので大丈夫です」 それでそう言ったが、彼は数秒、私の顔をじっと見ていた。 「クロード様、スープが冷めてしまいますよ」 耐え切れずそう言うと、彼は細く溜息を吐いた。 「分かった。 何かあったら必ず俺に言うこと。 君は何でもかんでも背負い込むんだから」 「はい。 お心遣いありがとうございます」 そう答えて、互いに食事を再開する。 離婚はしない。 そう言ってもらえただけで私は幸せだ。 それ以上を望むなんて…、罰が当たる。 先に夕食を取り終えたクロード様が立ち上がる。 これからお仕事をするのだろう。 「じゃあ、俺はお先に。 今日は疲れただろうからちゃんと休むように」 と彼が微笑む。 「はい、おやすみなさい」 私の返事を聞いた彼がダイニングから出ようとする。 行かないで… 「あっ…」 「ん?どうかしたかい?」 私の小さな声が聞こえたのか、彼はすんでで立ち止まる。 「あ、い、いえ。 あまり無理なさらないでくださいね」 本当は言いたかった。 きっと今夜中に本格的にヒートが始まるから傍にいてほしいと。 「無理をしてでも、俺は君との生活を守りたいんだ。 でも、悲しませたくはないからほどほどにするよ。 体を冷やさないようにね」 そして扉は閉ざされた。 優しい。大好き。愛してる。 そんな言葉が私の胸を締め付けて苦しい。

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