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第22話 酔い

ヒート明けのまだ少しぽやぽやしているユーフォルビアを堪能していたが、ネックガードを渡した途端に能面のような顔になり、服を着始めたのには驚いた。 笑顔でお礼を言われたものの、あの笑顔は絶対に本心を隠すためのものだ。 ネックガードが気に入らなかったのだろか? そう心配になったけれど、そのあとの夕食では付けていたし、入浴時以外は肌身離さず身に着けているらしい。 だが、あれ以来彼がどこかよそよそしい。 もう一線を越えてしまったのだからもう大丈夫だろうと、また距離を詰めてみたが避けられている気がする。 もしや…、ヒート中の記憶を思い出し、俺の事が気持ち悪くなったのだろうか? 彼の色気に当てられて、泣いて「だめ」と言う彼の言葉を無視して責め立てたり、甘くて美味しいので彼の精を貪りつくしたりが、やはりそれが嫌だったのだろうか…? いつか、彼が俺を好きになってくれたら、正式に番になってほしいとお願いするつもりだった。 が…、その前に嫌われてしまった? 「どうしたら好いてもらえるだろうか?」 「さあ?ちゃんと思いを伝えればいいんじゃないっすか?」 同じ騎士団の、ユーフォルビアと同世代の後輩に訊くも、あたりさわりない回答が返ってきて項垂れる。 やはり、自力で解決するしかないな… -------- 「明日は休みだからどこかへ出かけないか?」 夕食中にそう訊かれ、私は「いえ…、仕事がありますので」と断る。 初めてのヒート以来、こうして誘われることが増えた。 でも、クロード様のことを知ってしまうと、諦めなきゃいけないのに好きが増してしまう。 それが恐ろしくて毎度断っていた。 「そんなに忙しい? 俺にできる仕事もあるだろうし、明日は出かけて、明後日に2人で分担して仕事をしたらどうかな。 それで間に合わないなら他に誰かを雇ったって良い」 「私が至らないだけです!! 明日働けば大丈夫なので…、あの…、クロード様は私以外の別の方を誘ってもいいんですよ? そりゃ男性であった方が安心ですが…、Ωや女性でも私が口を出すことではないので…」 私がそう切り出すと、彼は大きく溜息を吐いた。 「俺はユーフォルビアと行きたいのであって、他の誰かなんて誘いたくもない」 そう苛立ったように言われて、少しだけホッとする。 でも、申し訳ない。 私を番にはしたくないけれど、デートには行きたい。 つまり…、恋人のような誰かと休日は過ごしたいけれど、番みたいな重い関係は嫌だということだろうと私は分析した。 でも、彼はもともと自分に言い寄ってくるご令嬢は鬱陶しがっていたし、恋人のような存在が欲しいという結論は若干違う気もしている。 けれど、そう分析しないと彼が一体なんで私なんかをデートに誘うのかまるで分らない。 「すみません、私が至らなくて…」 私がもっと、自分の気持ちを恋慕を隠し通せる立派な人間なら、こうしてクロード様を悲しませたり怒らせたりすることもなかったのに… 「…、ユーフォルビアは俺と出かけるのが嫌かい?」 「いいえ!そんなことはありません!! 本当に、私の都合なのです」 ここで肯定できれば、二度と誘われることはないだろう。 でも…、彼に嫌われたくないという弱い自分がどうしても首を縦には振らない。 「いや、俺のほうこそすまない。 嫌な質問をした。 もし、仕事が追いつかないようなら言うように。 こちらできちんと調整をするから」 彼はそう困ったように笑うと、ワインを一口啜った。 「ありがとうございます」 私もそう答えてワインを飲む。 あまりお酒は得意ではないけれど、今後の夜会に備えて毎晩少しずつ慣らしている。 最近は夕食が少し気まずくて、沈黙が出来るたびにグラスに口を付けてしまうのでいけない。 「ユーフォルビア?」 「ふぁい?」 「少々飲みすぎではないかな? ちょっと目が虚ろじゃないか」 「いえ、全然酔ってないですよ。 ちょっとうあうあ(ふわふわ)してますけどっ」 強がってはみるけれど、確かにいつもより酔っているような気がする。 今日は早めに退散させて頂こう。 そう思って「申し訳ございません。今日はもう下がります」と言い、立ち上がろうとした。 急にぐわりと脳が揺れて、私は思わず机に手をついた。 「ほら、言わんこっちゃない」 彼が慌てて私の横に並び、肩を貸してくれる。 「だ、大丈夫れす!歩けます!!」 私がそう言うも、彼は「どこかで転んでけがでもされたら困る」と言うと、あろうことか私を横抱きにして歩き始めた。 最初は「歩けます!」とか「おろしてください!」とか言っていたものの、誰かに抱かれて歩くという経験がない私ははしゃいでしまった。

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