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第25話 反省

今朝目の当たりにした地獄を見て、俺は1人カフェテリアで頭を抱えた。 噛み跡に内出血、切れてはいないけれど赤く腫れあがった後孔… 目には涙の跡が残っていて、そっと頬を撫でた時に漏らした声は枯れていた。 挑発してきたのはユーフォルビアだが、己の行いが余りに酷くて…、彼に合わせる顔がない。 メイドにお願いして、彼が目覚めたら手当をするように言いつけたが、いよいよ自分は嫌われてしまったのではないかと恐ろしくなる。 何の用事もないのに家を出て、こうして頭を抱えているというところだ。 とはいえ、カフェも遅くまでやっているわけではないので、閉店時間となり追い出された後はブラブラと暗くなった街を練り歩いた。 帰宅したときには日付が変わる直前くらいで、執事長に渋い顔をされた。 「ユーフォルビア様は、旦那様のお帰りをずっと待たれていましたよ」と言われ、心が痛んだ。 「すまない… 明日からしばらくの間は早朝に出て、今くらいの時間に戻ることになるから、彼には先に食事をとって眠るように伝えてくれないか?」 俺がそう言うと、執事長は溜息を吐いた。 「そんな大事なお話は、直接された方がよいのでは? これは老いぼれの邪推ですが…、やむを得ない事情のためにそうなさるわけではないのでしょう?」 全く以ってその通りなので俺は返事に窮する。 「と、とにかく、そういうことだ。 整理がついたら彼には説明するよ」 「はぁ…、お早めになされた方がよいかと」 執事長はそう言うと会釈をして、下がっていった。 せめて連絡をして出るべきだったなと後悔しつつ、明日の早起きに備えて俺も休むことにした。 勿論、ユーフォルビアと顔を合わせないための早起きだ。 -------- 「あの…、ドラコニア隊長ー」 いつかのテキトーなアドバイスをくれた部下が間延びした声で俺を呼び止める。 「心ここにあらずって感じですけど大丈夫っすか?」 こんなのらりくらりとやっている部下にも見抜かれるくらい、今の俺は腑抜けているらしい。 「ああ。大丈夫だよ」 そう答えるも、彼は「またユーフォルビア様のことですか?」と図星を突く。 いや、というか… 「俺の妻を気安く名前で呼ばないでくれるかい?」 それはダメだろ。 会ったこともないのに。 彼は表情を引きつらせる。 「隊長…、余計なお世話かもしれないですけど、αが番になれていないΩと過ごしていると、脳がバグるらしいっすよ。 伴侶として近くにいるのに、番じゃないっていう事実が精神を蝕むらしいっす」 「…、は? じゃあ俺はどうすればいいんだ?」 「うーん…、手っ取り早く番になるか、距離を置くしかないかと」 番… 次に彼にヒートが来るのは2か月と少し先だろう。 それまでに彼をまた傷つけることがあってはならない。 「距離か…、しかし、一軒家を建ててしまったからな…」 「ちょっ、え!? なんでそっちになるんですか!? 番にはなれなんっすか!?」 部下が慌てたように言う。 「その…、ヒートまで少し時間があるんだ。 その間に何かあっては困るから」 「いやいや、それこそちゃんと奥さんと話された方がいいっすよ。 愛する旦那様から急に距離とられたら、ショック受けちゃいますって!」 愛する旦那様…、か。 はたしてユーフォルビアは俺を愛しているのだろうか。 ヒート中や酔っている時の行為中にそういうことは言われたけれど…、シラフの時に言われたことがないような気がする。 だから”ヒートまで距離を置こう”と言ってホッとする姿を見るのもきついし、なにより今回の事を許してもらえるとはとても思えない。 それに、自分自身が今は冷静でいられないのだから、とにかく少し時間を置きたかった。 「いや、無理な励ましは大丈夫だ。 とりあえず、今日からここに泊まり込みだな」と俺が言うと、部下は「ああ…」と頭を抱えた。 「俺のせいでとんでもないことになっちゃったかもしれません。 申し訳ございません、ユーフォルビア様」 「おい。今名前を呼んだな? 外周追加だ。 俺もともに走るから行くぞ」 俺が部下の尻を叩くと、彼はヒンヒン鳴きながら走り出した。

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