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第28話 和解

「必ず、息の根を止める」 クロード様が低くそう言い捨てて今戻ったばかりの家から出ようとする。 お気持ちは嬉しいけれど、殿下を殺害したとなれば国家を揺るがす大事件だ。 鍛えているクロード様なら、痩身な王太子の首をへし折るくらいたやすいだろうし… 「だ、だめ!!」 私は必死に彼の背中に縋りついた。 「元婚約者を庇うのかい?」 クロード様が苛立たし気にそう言うが、庇うつもりは毛頭ないので首を横に振る。 「こ、怖かったんです!」と、口をついて出た。 物を投げつけられたのは痛かったが、あの程度の男、怖くもなんともない。 嘘がするすると口をついて出る。 「まだ、1人になるのは怖いので、今夜は傍にいてください…」 背中に縋りついたままそう言うと、クロード様は体の力を抜いた。 「怖い思いをさせて申し訳ない。 どれもこれも、君を1人にした俺の責任だ」 そう言って彼は私を抱きしめ、ケガをした場所を配慮するためか後頭部を撫でた。 久々の好きなαとの触れ合いに、私の毛羽立った心がみるみるうちに癒されていく。 すっかり脱力して彼に寄りかかっていると、執事長が大げさに咳払いをした。 私はハッとして彼から離れる。 クロード様は少し残念そうな顔をしたような気がする。 「まずは経緯の説明も兼ねて、夕食にしてはいかかでしょう?」 そう言われて私たちは頷いた。 クロード様がいる食卓は温かくて料理の味がしっかり感じられた。 私は掻い摘んで再度、王太子の話を説明する。 彼はずっと険しい顔で私の話を聞いていた。 「しかし…、なぜ今さら単身で我が家に乗り込んできたのだろう」 そう呟くクロード様に、執事長が「旦那様が帰られていないので近々離縁されると思われたようですよ」と容赦なく刺した。 「なっ…、お、俺のせい…」 深く項垂れる彼に、執事長はさらに「奥様は閨が下手だからそうなのだと。閨が下手なら、閨はダリア嬢に任せて仕事だけしろとまでおっしゃられておりました」と私があえて言わなかったことまで付け加える。 「本当にいよいよ俺のせいじゃないか… しかも、あろうことかユーフォルビアの閨が下手だと? バカも休み休み言ってほしいものだよ。 ユーフォルビアはそばにいるだけでうっかり手を出してしまいそうなほど魅力的で、その肌は滑らかで、中の調子も…」 「クッ、クロード様!!!」 人前でなんてことを!! 私は顔を真っ赤にして、言葉を遮った。 「でも…、閨が下手なのはそうかもしれません。 閨と言うより…、その誘い方とか気持ち悪かったですよね」 と自嘲的に笑う。 あんな風に積極的に誘われたら、100年の恋だって冷めるだろう。 「気持ち悪いことなんかない!! むしろ気持ち悪いのは俺の方だ。 君が泣いて嫌がっても止まらないどころか、沢山跡を残してしまった。 噛んだところは血が出ていたし、後孔も腫れてしまっただろう? だが、君がそばにいるとまた味わいたくなってしまう… 俺はどうしようもない男だ」 そんな風に思っていたのかと驚いた。 てっきり、私が嫌で帰ってこないものだと思っていた。 「じゃあ、クロード様は私を嫌いになったわけでないのですか?」 「そんなことはあり得ない」と食い気味で言われる。 「じゃあ…、当分離縁もしないですか?」 「冗談でもその単語を出さないでくれ… 俺は一生ユーフォルビアを手放さないよ」 即答されて私は脱力した。 よ、よかった… 「全く…、今回に関しては双方の話し合い不足だとは思いますが…、旦那様は深く反省すべきかと存じますね…」 執事長がそう鋭く言うと、クロード様は「返す言葉もない」と苦笑した。 「本当に申し訳ないことをした。 君さえよければ、夕食の後、俺の部屋で待っていてくれないだろうか?」 とクロード様に訊かれた。 クロード様のお部屋で…!?と邪な考えに浸っていると、 「ちゃんと話がしたいんだ。2人で。 今日がだめなら明日でも明後日でも…」 と言われて、恥ずかしくなる。 話をするだけなのに、勘違いをしてしまった。 それを誤魔化すように咳ばらいをし、答えた。 「はい。ちゃんと話しましょう。 湯浴みをしたら、お部屋に伺います」 「ああ。 俺は少し仕事をしてから行くから寛いでいてくれ」 彼はそうホッとしたように笑うと、食卓を後にした。 実に数日ぶりの帰宅なので仕事も溜まっているのだろう。 私は、2人の関係が戻ることを嬉しく思い、久々に香り風呂を楽しみ、入念に体を洗って彼の部屋に向かった。

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