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第29話 話し合い①

クロード様の部屋の前に立つ。 でも、ノックをする勇気がなかなか出ず、手を上げたり下げたりしている。 我ながら滑稽… 廊下の向こう側からメイドが来る気配がして、意を決してノックをした。 返事はない。 先に待っていていいと言われたので、そっと「失礼します」ドアを開けて中の様子を探る。 クロード様は不在だった。 私はホッと肩の力を抜き、中に入った。 ここに来たのは数える程度しかない。 ヒートの時と、私がお酒に酔った時。 シラフで来たのは初めてなので少々緊張する。 どこで待つべきか思案したのち、2人掛けのソファの端に座った。 部屋をぐるりと見まわす。 私の白っぽい明るい部屋と違い、暗色でまとめられた落ち着いた部屋だ。 少し寒さを感じて、メイドを呼ぶとクロード様用のひざ掛けを渡された。 「え、えっと、あの…、私用のものは…」 勝手にお借りして汚してしまったりしたら大変なのでそう言うと、 「奥様のお部屋まで取りに行く間に、奥様のお体が冷えたら大変です!」 と断られた。 いや、そんなにお部屋は遠くないはずだけれど…、メイドたちは遅い時間でも仕事がある為、忙しいところを引き留めるのも申し訳ない。 「これで大丈夫です」と言うと、彼女は満足そうに頷き颯爽と仕事に戻る。 どこか誇らしげにすら見えた。 クロード様が戻られたら謝ればいいかと、それを肩にかける。 冷涼な地でのひざ掛けはふわふわとして厚手だ。 クロード様の香りがして、こうして肩にかけていると包み込まれているみたい。 はしたないと分かってはいるけれど、私はそのままソファに横になった。 こうして包まれたまま毎日眠れたら幸せなのに… たださえ避けられているのに…、そんなのは夢のまた夢だ。 だんだんとうつらうつらしてくる。 寝るにはまだ早い時間だし、クロード様を待たねばと抗ってみたものの、王太子に会ったりなんだりで気疲れしていたのか、私はすっかりと眠りこけてしまった。 肩を揺すられて目を開ける。 クロード様が私の顔を覗き込んでいた。 がばっと跳ね起きる。 「も、申し訳ございません!! 寝てしまいました!!」 慌てて謝る私に彼が笑う。 「疲れていたんだろう。 寝るのは構わないが、ソファじゃ風邪をひくし体を痛めるだろう?」 そう言って彼が両腕を差し出すので、私は何も考えずにそこに飛び込んだ。 寝ぼけて大胆な行動をとってしまったと焦るも、彼は軽々と私を抱き上げてベッドに向かおうとする。 「あ、あのっ!!お話し合いを!!」 私が慌てると、「ベッドでも話せるだろう?」と不思議そうな顔をされた。 また私だけ過剰に反応してしまっているのだろうか? でも、クロード様のベッドは…、2度もまぐわってしまった場所なので正気ではいられない。 「あの、また眠ってしまうといけないので、ソファで話しませんか?」 「そんなに眠いなら今日はもう寝てしまって、明日話すか?」 そう訊かれてしまったけれど私は首を横に振った。 「い、いえ!大丈夫です! で、ですが、今日はソファがいいです…」 「そうか…?」 しばし思案した後、彼はソファに腰を下ろした。 私を抱えたまま。 「えっと…、あの、1人で座れます」 私がそう言うと、彼は 「場所は譲歩したんだから座り方くらいは我を通してもいいだろう?」 と口を尖らせた。 そ、そうなのかも…? 「は、はい」 と頷くと、彼は嬉しそうに私の首筋に顔を(うず)める。 くすぐったいし、話に集中できなくなりそうだから止めてほしい。 「まずは、俺が家を空けていたことから説明しようか」 理由を聞くことが怖い。 けれど、私に何か不備があったならきちんと聞いて対処したいので頷いた。 クロード様は一息つくと、説明を始めた。 番になっていないΩが近くにいることでαが狂ってしまうことや、私を傷つけたくないこと。 次のヒートで番にならせてほしいことと、それまで距離を置きたいこと。 αがおかしくなってしまうという話は初耳だったので驚いたし、ちゃんと私と番になってくれる予定があることは嬉しかった。 「ユーフォルビアに勘違いをさせてしまって申し訳なかったね。 俺はずっと昔から…、それはもう本当にずっと昔から、君のことが好きだった」 「…え?」 「やっぱり気付いてなかったか」 クロード様はがっくりと項垂れた。

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