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 光輝のチャンネルが収益停止を受けたと知らせる配信を始めると、午前中にも関わらず多くの視聴者が集まった。  ミカン ねこまるという名前で、元気でちょっとやんちゃなヒーロー大学生を設定したV活動をしている。けれどこの日は、弱っている素の姿が出てしまっ い、光輝は申しわけなく思う。  だが、逆にギャップを喜ぶ者もいれば支えたいと言ってくれる者もいて、光輝はやはりこの居場所をなくしたくない気持ちがますますふくらんだ。 『必ず復活すると信じてるのでこれからも続けてください。生きる糧です。応援してます』  ゾッラという常連からは高額投げ銭まで届いた。  いつもの雑談配信よりもごく短い、収益停止報告を終えて配信ソフトを落とす。  応援の声を聞いて気持ちが前向きになったせいか、腹が減っていることに気づく。  今後の計画を練り始める前に、コンビニで何か買おうとスマホをズボンのポケットへ押し込んで玄関へ向かう。  ピンポーン  サンダルをひっかけている間に、インターホンが鳴った。リビングのカメラまで誰かを確認しに行くのも面倒なので、そのまま扉を開けてみる。 「光輝」  現れたのは同じ大学に通う2年生の日隠執司(ひがくれしゅうじ)だ。  ショートにパーマをあてた黒髪で、すらりとした体躯。光輝よりも頭ひとつ分背が高いので、視線をあげて涼し気な瞳を見た。 「来る約束してたか?」  収益停止連絡を受けてショックを受けたあまり、執司との約束をすっぽかしたのかと、慌てて思い出そうとする。 「してない」  返答を聞いてほっとしたけれど、なぜ約束がないにもかかわらず部屋まで来たのだろう。  光輝は執司の表情から読み取ろうとする。だが、ふだんから感情を表に出さないたちなので、今もどういう気持ちでいるのかよく分からない。 「大丈夫か、これ昼に食べろ」  手に持っていた、紙袋をこちらへよこしてくる。中をのぞくと、タッパー入りの食事が3つほど収まっている。 「うわうまそ、サンキュ! ちょうどコンビニ行こうと思ってたんだよな」  さらに空腹が進んで、受け取った惣菜を今すぐ口にしたくなる。 「けどこれ、何で?」 「同じ講義休んでたから、気になっただけだ」  講義を休むことはたまにあったし、そのとき執司から連絡は入っても、わざわざ家まで来ることはなかった。 「お前こそ授業は?今日、まだあるだろ?」  光輝の住まいは大学から比較的近い立地とはいえ、今から向かっても次の講義には遅れそうな時間だ。 「そんなことはいい。すぐ俺の家に引っ越してこい」 「……へ?」  執司の突拍子もない提案に、光輝はぽかんと顔を見た。  執司は実家で母親とふたり暮らしをしていたが、母は仕事の都合で今年の4月から単身赴任を始めたらしい。 「小さい頃お前の家に、俺も母さんもずいぶん世話になっただろ。だから、恩返しさせてくれ」  執司と光輝は幼なじみで、小学生の頃は執司の母親が仕事から帰るまで、執司は光輝の家ですごしていた。 「そんなことで恩とか言うなよ。俺も執司が来てくれるの楽しみにしてたんだし」  仲良くふたりですごせたのは中学生になる頃までだった。あの頃、光輝はいつもくっついてくる執司をかわいいやつと思っていた。 「俺は夜はバイトで家にいないことが多い。お前の部屋もちゃんと用意できる」  玄関の壁際へ追いやられ、距離を詰められながら執司の言葉を聞く。 「おい、ちょっと待て、何でお前んちに引っ越さなきゃいけねーんだよ!」 「今から見に来い。でもその前に食べろ」

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