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電車で数駅のところにある執司の家へ、強引に光輝は連れていかれた。
けれどその前に食事はきちんととれと言われ、光輝は執司から受け取った食事を食べ終えている。
ふたりの母親同士は大学の頃から仲がよく、執司の父親と死別したことをきっかけに、近くへ引っ越してきていた。
(だから実家もすぐそこなんだよなぁ)
とはいえ家が隣同士という立地ではなく、よく利用していた徒歩5分のスーパーを挟んでほぼ対称の場所にある。
理由も言わず先を歩く執司の背中をのぞき見る。
執司の強引さに断れずついてきてしまったけれど、今やるべきことは今後の対策を立てることだと気がはやった。
「お……お邪魔しまーす」
家に着くとさっそく階段をのぼって2階へあがり、短い廊下を進んで突き当たりの部屋を案内された。
「うわ、久しぶりだな、執司んち。けどここって、お前の部屋じゃなかった?」
まだ交流があった中学生の初め頃まで、何度か遊びに来ていた懐かしい部屋だ。
「そうだ。ここを使ってくれ」
慌てて物を移動させたのか、まだ片付け途中の様子がある。それでも光輝のひとり暮らし部屋とは違って、掃除されていて物は少ない。
「何で俺がお前んち住むんだよ?」
「ここで暮らせば家賃はかからないだろ」
執司が急に光輝の家賃の心配をし出した理由がわからない。
家賃支払いの危機に陥りそうな光輝からすれば、ありがたすぎる提案だ。けれど、大事にしているあの部屋を切り捨てられたようで、気分が悪い。
「困っているんだろう? 違うのか」
「ちがわねーけど……俺のこと、何か知ってる?」
大学の友人にもV活動は話していないし、オフで会ったことのあるV仲間もいない。きっと執司は知らないはずだけれど。
「生活が整ってない」
「え」
急に話題が変わって光輝はとまどう。
「最近講義をさぼりがちだ。顔色も悪い。食事をおろそかにしているし、睡眠不足なんだろう」
遅くまで配信する日が続き、確かにそのとおりだった。学食でも、寝不足で食欲がないと言っていたかもしれない。
「……確かに」
当たりすぎていて光輝は反論できない。執司は家賃を引き合いに出して、光輝の体の心配をしているらしい。
「母さんの許可は取ってある。光輝の家にも連絡が入ってるはずだ」
「えっ」
あまりの周到さに、光輝は引きそうになるが、一度決めたら引き返さない執司の性格も知っている。
「いいから住め。わかったな。荷物がまとまり次第引っ越してこい」
光輝が納得しないまま、執司は説明を進めていき、ネット回線や隣家との距離などまで教えた。V活動をするには十分な環境が整っている。
(あの部屋に住めなくなっても、ここなら続けられるじゃん)
執司にV活動を軽く見られたようで気分を害したくせに、もう執司に甘えようという気になってくる。
(収益停止が解除されればすぐ戻ったらいいし、その前にバイト先が見つかってもすぐ戻ればいいか)
楽に逃げ道が見つかってしまい、光輝は少しだけ気が緩む。我ながら流されやすいと思いつつ、都合よくこれからのことを考え始めた。
「だから早くあの部屋を解約しろ」
「は、なんで?」
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