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「……どした、急に?」  表情を動かさず、執司は続ける。 「ここに住むからには生活態度を改めてもらう」 「え」  配信は夜中までするし、そのあと残った作業をすることもある。朝は寝坊するだろうけれど、執司の生活に迷惑はかけないようにやるつもりだった。 「言っただろう。お前の生活を整えるためだ」 「んなの、放っといてくれよ!」  手を振り払おうとしたけれど、手首をつかむ力が思いのほか強く、抵抗できない。 (まじかこいつ……こんな力強くなってんの……?)  自分を心配してくれているのはわかるし、世話になる身というのも自覚しているつもりだ。  けれど、大学生になって再会したこの1年と少しの間に見た、静かで口数の少ない執司とは雰囲気が違っていて、心配になる。 「下、行くぞ」  執司に腕を引かれるまま、与えられた二階の部屋を出てダイニングキッチンへおりると、テーブルにメニューがずらりと並んでいる。 「すげー! うまそう!」  自分の食事はコンビニへ出かけて何か買い、済ませる予定だった。けれどそれも面倒だったので、さっきは『寝る』と言っただけだった。  腹の虫が思わず鳴く、体は正直だ。 「これ、もしかして俺の分もあるのか?」 「当たり前だ。ろくな食事をしていないのは知ってる。だから食え」  栄養バランスまで考えて作られたであろう、色鮮やかで温かな料理たちに自然と吸い寄せられて、光輝は席についてしまう。  執司は確か、今年の4月からひとり暮らしを始めたはずだが、いつの間に料理の腕を磨いたのだろう。 (ひとり暮らしして2年目になるけど、全然料理してねーや)  ほぼ使われていない自室のコンロは、油汚れなどいっさいなく、ほこりをかぶっていることを思い出す。  テーブルの向こう側に執司が座り、光輝の方を見てくる。先ほどの厳しい表情ではないけれど、笑っていないし考えが読み取りづらかった。 「いただきます!」  大きくあいさつして光輝が料理を味わい始めると、執司も食べ進め始めた。中には光輝の苦手な食材を使ったメニューもあった。  けれど光輝の分としてよそわれているため、残すわけにはいかない気がした。そして仕方なく口にする。 「うま! え、俺ほうれんそうってちょっと苦手なんだけど、これうまい、食べれる!」 「そうか」  視線を外した執司はなんとなく嬉しそうな雰囲気をしている。料理を褒められると嬉しいらしい。 「いつからこんなに料理うまくなったんだ?」 「中学の頃から始めて、少しずつできるようになった」  ちょうど光輝の家で執司を預からなくなった頃だ。 「すっげ、この卵焼きの味大好き!」 「なら明日の弁当にも入れてやるな」 「え、弁当……?」  次々と箸を進めていた手を止める。 「俺の分のついでだ。ふたり分作ろうと、大した違いはない」  光輝が料理を褒めたことで、執司は気分がよくなったのだろうか。  今度はしょうが焼きをつつきながら、光輝は執司の顔色をうかがう。  今までは執司も学食で昼食をとっていたはずだ。 「めんどくね? 今までしてなかったじゃん」 「今まではな。けど今は必要になったから、作るよ」  それは光輝が自宅へ住むようになったから、と言っているようにも聞こえる。 「メシなんか、俺適当に食べるよ?今日は初めての夜だから、作ってくれたんだよな?」 「それがダメだって言っただろう。食事は栄養のある物を俺と食べる。いいな?」  再び厳しい表情になった執司に釘をさされ、光輝はおとなしくうなずいた。  生活を管理される、ということが本格的なようで改めて驚いたけれど、あたたかい食事が食べられるならいいかもしれないと、簡単にほだされてしまった。

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