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 翌朝、寝坊せずに起きた光輝は朝食の際に、執司の部屋へ勝手に入ったことを謝った。 「そういうことなら仕方ないな」  叱られるかと思っていたけれど、意外とあっさり許してくれた。それならと、光輝はさっそく探りを入れていく。 「なぁ、教科書にアクスタ挟んであったんだけど、あのV好きなの?」  テーブルの向かいに座った執司は食事の手を止めて、光輝の方をまっすぐ見る。 「そうだ、好きだよ」  瞳をとらえて言ってくるので、まるで光輝に言われた気がし、落ち着かなくなってしまう。 「そ、そっか! 俺も見てるんだ、面白いよな」 「登録者ひと桁のときから見てる。推しが育っていくのは嬉しいな」  一見趣味もなさそうな執司の口から、『推し』という言葉が出たのは意外だった。そして、長いあいだ自分を応援し続けていてくれたと知り、光輝は嬉しくてたまらない。  思わずにやけそうになる口元へ、力を入れて押しとどめる。  しかし執司は光輝がその演者だとは気づいてはいないようだ。 (俺かもって疑ってたら、きっと聞いてくるよな?)  だが、VTuberのファンの中には、正体を知りたくない者も多い。それにVのキャラはキャラとして生きており、中の人がいるという話はしないのがマナーととらえる者もいる。 (いやいや待て、ならねこまるが俺だってばれたら執司はがっかりするかも?)  だとすると、執司にばれることなく配信するには、執司のバイトがない日の夜は難しい。毎日配信をして収益停止解除後に備えたいけれど。 (壁1枚向こうにいるんじゃ、聞こえるよな。どうしよ、シフト聞いて予定組むか?) 「あ、えっと、執司って夜バイトある日いつ?」  やや首をかしげたように見えたけれど、テーブルの端に置いたスマホを取り、シフトを確認してくれている。 「今日はない、明日明後日はある。だけどバイトのない夜は1階で仕事するから、気にするな」 「そっか、了解。え、お前家でも仕事してんの?」 「パソコン使ってちょっとな。お前が寝るまで下にいるから、好きにしろ」  ひとり暮らしを維持するには金がかかる。それは光輝も理解しているけれど、執司は実家なので家賃はかからないはずだ。食費もろもろは自分でまかなっているのだろうか。 「寝るとき、声かけようか?」 「俺もキリのいいところまで作業するから、気にしなくていい」  思いがけず、配信しても支障のない状況が整ってしまった。 「光輝が寝るまであがらないから、心配するな」 「お、おう……」  不思議な念を押され、逆にその間は階下へおりてくるなと言われたようにも感じた。

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