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帰宅後、2階の自室へ戻った執司は高校の通学バッグを床へ置き、制服から部屋着へ着替えると、翌日の予習を始める。今日は週に一度の大学受験対策通信講座があるので、予復習の予定を前倒ししなくてはならない。
喉が渇いた執司は、いったん手を止め、休憩がてら階下のキッチンへ向かう。
スマホを操作し動画サイトを開くと、特撮系の音楽リストをチェックしていく。
幼い頃光輝と毎週のヒーロー番組を楽しみにしていたこともあり、今でもやる気を出したいときには特撮作品の音楽を聞いていた。
「え?」
特撮音楽をよく検索するため、似た関連動画も勝手におすすめ欄へあがってくる。
いつもなら特に気にも止めないけれど、今日は違った。
「……まさか」
おすすめ欄に登場したのは、オレンジ色がメインのヒーロースーツを着て猫耳を頭につけたVtuberだった。アカウント画像にライブ配信中の表示がついている。
「光輝なのか?」
見覚えのあるデザインのキャラクターは、小学生が描いた稚拙なイラストではない。きっとプロが仕上げたのだろうけれど、幼い頃光輝と初めて誕生させたオリジナルヒーローにそっくりだった。
可能性を信じて執司はリンクを開いてみると、懐かしい声が響いた。聞き間違えるわけがない。
『そーだなー、まずはチャンネル登録者1000人目指したいんで、ぜひご協力お願いします!』
雑談を配信しているのか、画面上には2Dモデルとコメント欄のみが表示されている。視聴者が少ないのか、それほどコメントの流れは速くない。
『聞きたいことあったら答えるぜ!何でもコメントして』
固定のファンがついているのか、寄せられるコメントの中には、いつもありがとうと言ってから答えるものもある。
常連がいることを知り、執司は眉間にシワが刻まれてしまう。
(俺の方が光輝のことを知っているし、近くにいた)
VTuberの演者が光輝だという確証はない。けれど、執司は光輝だと信じて疑わない。
おかげで会えない間にたまったフラストレーションを、一気に自覚した。
今は近くにいないし、話しかけることすらできない光輝。執司は連絡先も知らなかった。
(でもこの光輝となら、いつでも話すことができる)
執司は水分補給しにきたことも忘れ、スマホから新たな動画視聴用のアカウントを作る。階段を駆け上がって自室へ戻り、教科書やノートを机の脇へ適当にどけてノートパソコンを起動した。
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