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執司の家へ居候し始めた光輝は、しばらくして風邪をこじらせ寝込んでしまった。
「ちゃんと休んでないだろう。だからだ。薬は飲んだのか?」
自室のベッドへ横になっていると、執司が氷枕と水分を持ってきてくれた。
このところ、執司が深夜バイトを終えて戻ってくる時間まで、配信や作業をしていることが多かったのだ。
「わりぃ、俺のために住まわせてくれんのに……」
執司が光輝を自宅へ強引に呼び寄せた理由は、生活の改善だといっていた。
確かに母親からも、執司のもとで世話になった方が安心だと連絡をもらっており、母親同士のやりとりも絡んでいることがわかった。
(母さんから頼んだわけじゃないんだよな?執司は何でわざわざこんなこと?)
疑問は解消されないままだったけれど、今はそれよりも体調不良を何とかしなくてはならない。
「ありがと」
タオルで巻いた氷枕を、頭の下へ差し込まれる。後頭部へ添えられた手が思った以上に優しくて、どきりとしてしまう。
チャンネル収益停止解除の申し立ては、通らなかった。昨夜返信を受けたせいで、我慢していたものが一気に崩れたようだ。
「無理しすぎだ。バイトなんて始めることなかっただろ」
「だって、やっぱあの部屋は……解約したくねーんだよ」
家賃などを自分で払っていることを執司へ伝えると、眉根を寄せて答えを返された。
「だから、ここへ住めば家賃はかからないだろ」
「そういうわけには、いかねーんだよ」
ミカン ねこまるの演者が実は光輝だとばれて執司を幻滅させないために、それ以上の理由は話さない。
すると仰向けでふとんをかけた胸の上に、執司の大きな手のひらが置かれた。何度かさすり、優しくとんとんと叩いてくれる。
「?」
「昔よくやってくれただろ。これで落ち着いたから」
小学生の頃、週末光輝の家に泊まり同じ部屋で寝ていた執司は、夜になると不安そうな顔をして縮こまっていた。そんなとき、光輝がなだめるように胸をさすってやると、よく眠ったのだ。
(覚えてるんだ)
執司がかわいくて、自分が守ってやらないとと思っていた、小学生の頃のことだ。
同じようにされると、確かに体が楽になってくる。
うとうとしかけると、執司の心地よい声が届いた。
「寝るまで、ここにいるから。気にせず寝ろ」
誰かに見守られながら寝るなんて子供みたいだと思いつつ、体調の悪い光輝は安心してまぶたを閉じる。
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