23 / 41

4-4

「付き合ってくれって言われてる」 「え」  手に持っていたペットボトルが、手からすべり落ちて大きな音を立てた。 「へ、へぇ、そっか……確かにそんな感じだったし、そっか……」  予想が当たってしまい、光輝は気まずい以上に心がモヤモヤとする。しかし執司は、すでに付き合っているとは言っていない。 「光輝、落ちたぞ」  こちらを向いた執司に声をかけられた。  拾おうとしない光輝に代わり、執司はスポーツドリンクのペットボトルを拾い、差し出している。 「あ……ありがと……で、付き合うのか?」  受け取ったペットボトルをきつく握りながら、率直に聞く。知りたい、けれど知りたくない。 「返事は保留にしてる」 「じゃあ、そのうちってことか?」  断るつもりではないのなら、あの男子と恋人になる選択肢があるということだ。 「まだ決めてない。考えてることがあるからな」 「どういうことだ?」  光輝に向かい合う、執司の顔を見上げ首をかしげる。 「好きな人がいるから、即決はできなかった。今気持ちをまとめてる」  見上げる光輝の視線をまっすぐとらえ、執司は淡々と語っている。 「……好きな人、いんの?」  せっかく拾ってもらったペットボトルを、また落としてしまいそうになる。  中学の頃、誰とも付き合うことのなかった執司は、大学へ入ってからも同じだった。恋愛の話題が友人たちの間で出ても乗ることはなかったし、てっきり恋愛そのものに興味がないと思っていた。 「それって……俺も、知ってるやつ?」  好きな人がいるのなら、バイト先の男子からの告白は断ってしまえばいい。けれどそうしないのはなぜか。  そんな疑問よりも、執司に好きな人がいたことがショックで、それでも想っている相手は誰かが気になってしかたがない。 「邪魔になるから、想っているだけでいいんだ」  ヒントをもらえないまま、執司の決意だけを聞かされる。本命を諦めて、妥協して、告白してきた相手と付き合おうとしているのか。 「なんでっ、執司の告白ならきっとOKされるだろ?昔からモテてんだし」  すると執司は大きくため息をついて光輝から視線を外す。ノートパソコンの方へ向き直し、作業を始めてしまった。 「なぁ、ヒント! ヒントだけでもくれよ!」  執司がどんなタイプの人を好きになるのかが知りたい。  努力したら自分も対象になれるのか、既に好きな人がいると聞いたけれど、知っておきたかった。

ともだちにシェアしよう!