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「付き合ってくれって言われてる」
「え」
手に持っていたペットボトルが、手からすべり落ちて大きな音を立てた。
「へ、へぇ、そっか……確かにそんな感じだったし、そっか……」
予想が当たってしまい、光輝は気まずい以上に心がモヤモヤとする。しかし執司は、すでに付き合っているとは言っていない。
「光輝、落ちたぞ」
こちらを向いた執司に声をかけられた。
拾おうとしない光輝に代わり、執司はスポーツドリンクのペットボトルを拾い、差し出している。
「あ……ありがと……で、付き合うのか?」
受け取ったペットボトルをきつく握りながら、率直に聞く。知りたい、けれど知りたくない。
「返事は保留にしてる」
「じゃあ、そのうちってことか?」
断るつもりではないのなら、あの男子と恋人になる選択肢があるということだ。
「まだ決めてない。考えてることがあるからな」
「どういうことだ?」
光輝に向かい合う、執司の顔を見上げ首をかしげる。
「好きな人がいるから、即決はできなかった。今気持ちをまとめてる」
見上げる光輝の視線をまっすぐとらえ、執司は淡々と語っている。
「……好きな人、いんの?」
せっかく拾ってもらったペットボトルを、また落としてしまいそうになる。
中学の頃、誰とも付き合うことのなかった執司は、大学へ入ってからも同じだった。恋愛の話題が友人たちの間で出ても乗ることはなかったし、てっきり恋愛そのものに興味がないと思っていた。
「それって……俺も、知ってるやつ?」
好きな人がいるのなら、バイト先の男子からの告白は断ってしまえばいい。けれどそうしないのはなぜか。
そんな疑問よりも、執司に好きな人がいたことがショックで、それでも想っている相手は誰かが気になってしかたがない。
「邪魔になるから、想っているだけでいいんだ」
ヒントをもらえないまま、執司の決意だけを聞かされる。本命を諦めて、妥協して、告白してきた相手と付き合おうとしているのか。
「なんでっ、執司の告白ならきっとOKされるだろ?昔からモテてんだし」
すると執司は大きくため息をついて光輝から視線を外す。ノートパソコンの方へ向き直し、作業を始めてしまった。
「なぁ、ヒント! ヒントだけでもくれよ!」
執司がどんなタイプの人を好きになるのかが知りたい。
努力したら自分も対象になれるのか、既に好きな人がいると聞いたけれど、知っておきたかった。
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