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第2話

はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…… ギリギリ、だった。 もし洸太の腕を掴めなかったら、今頃、俺たちは── 考えただけで、ゾッとする。 「いてて……」 うつ伏せで俺の上に乗っている洸太が、こめかみ辺りを抑えながら頭を僅かに擡げる。 「大丈夫か?」 「……」 相当ショックだったんだろう。 当たり前だ。轢かれそうになったんだから。 大きく肩を震わせたまま動かずにいる洸太に、再び声をかける。 「怪我はないか?」 「……」 「どうした。頭でも打ったのか?」 心配して声を掛け続けるものの、一向に返事がない。 それどころか、肩の震えが次第に大きくなっていく。 「やっぱ、遥斗やなぁ……」 僅かに掠れた、洸太の恍惚とした声。 「嬉しいわ。今度はちゃんと、助けてくれるんやな」 「………なに、言ってんだ」 洸太が放った不穏な台詞に、一変する空気。 じっとりと張り付く汗。緊張から、自然と震える声。 「何って……見捨てたやんか、あん時──」 ゆっくりと、頭を上げる洸太。 その顔を見た瞬間、息が止まる。 ポタ、ポタ、ポタ…… 片手で押さえていた指の隙間から、滴り落ちる鮮血。 「……なぁ、遥斗」 満面の笑みを浮かべる洸太が、その手を伸ばし俺の頬を包む。 ねっとりと、血に濡れた生温かい手のひら。 「まだ、思い出さんの?」 ふと笑みが消え、表情のない顔が目の前に迫る。 暗闇の中、光を失った漆黒の瞳が、俺をじっと見下ろす。 「突き離したよね。 あの時──俺が『好きだ』って、言ったら」 耳馴染みのある、洸太の標準語。 合わせた視線を逸らせずにいれば、洸太の白目が血で赤黒く染まっていく。 上擦る呼吸。痺れる手足。 洸太の吐息が、怯え震える俺の鼻先に掛かる。 「でも、もう逃さへんよ」 滴った血が俺の口角に落ち、どろりと咥内へと流れ込む。 粘度のある、錆びた鉄のような味。 それを見た洸太の唇が、綺麗な弧を描く。 「ずーっと、一緒にいような。 この世界(常夜)で、永遠に……」

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